辻村 深月『傲慢と善良』

傲慢と善良

傲慢と善良

婚活アプリで出会い数か月後に結婚式を挙げる予定の男女がいて、女のほうが突然姿を消す。以前からストーカー被害に悩まされていたことを知る男は東京に出てくる前に関わりのあった人物がストーカーなのではと考え、彼女について調べるべく故郷の群馬へ向かう。という始まりで、まずは男の視点で結婚相手がどんな生き方をし、周囲の人間たちからどう思われ、どんな人間である(あった)のかを知る話で、後半は姿を消した女の視点でなにがあってなにを思ってなにをしたのかが描かれ、そこから自分探しの話になって、そして二人は再会し、最終的に自分たちの意志で結婚式を上げました、という物語です。

タイトルにあるように「傲慢」と「善良」という言葉が作中でたびたび登場するのですが、まあ・・・人間はたいてい傲慢だよねと。善良さの裏には傲慢さがあるし、傲慢であることに対する自覚があるかないか、あればいいってもんじゃないしないことが問題とも限らないし、傲慢といってもレベルはいろいろあるよね。

というわけで、男のほうは友人が大勢いる所謂「リア充」なのですが、その女友達というか自ら「架(男の名前)の親友」と言う女達の描写が酷すぎて笑ったわ。傲慢オブ傲慢として作中に置かれた存在だとしても、底意地悪すぎってかこれだけ言った相手に「また遊ぼうねー」とか言えちゃう女いるよねー(笑)的な。
(でも私、かなり早い段階で、なんならプロローグの時点でストーカー話は多分嘘だろと思ったんで、この女友達たちと思考の方向性は似てるというか私も大概性格は悪いんですが、でも私はそれを本人に直接言ったりはしない。心の中で「この女嘘ついて男捕まえといてなに大人しいぶってんだよ」と毒づいたり嘲笑したりしながらも表面上は「興味ないです」ってな顔をする)


男友達はそんなことないどころかむしろ「いい奴」として描かれてるし、架が会った真美(女の名前)のお見合い相手の男たちも「善良」な人間(だと架は思う)なのに、お見合い相手と結婚した女とか話の中に出てくるだけの女とか、女はモブまできっちり「傲慢」っぷりを発揮するのが実に辻村作品らしい。そういうとこ好き。