古川 春秋『暗殺日和はタロットで』

暗殺日和はタロットで

暗殺日和はタロットで

初めての作家さんです。

表紙絵と心理占星術研究家なる人の「タロットを熟知した僕でも伏線の網に絡めとられました」「バイオレントなのに爽快なんて、ちょっとずるい」という推薦文からまあ・・・軽い感じのやつを想像していたわけですが(そういうのを読みたい気分だったので)、超バイオレンスでした(笑)。

ピアノのコンクールに母親と車で向かう若い女性がその道中で交通事故に遭い、母親は即死で自身も胸に鉄骨が突き刺さった状態で、でも心臓移植で命は助かるもののその後戻らなかった意識が4年ぶりに戻ったところから話が始まり、生年月日が全く同じライバルのピアニスト(美人)の存在に触発されてリハビリを頑張り退院できたらその日に父親も交通事故に巻き込まれて死んでしまいます。その後帰宅しようとしたら見知らぬ男にナイフで殺されそうになっているところを殺し屋の男に助けられ、そのまま行動を共にしたら麻薬王と呼ばれる裏社会のボスの手下に拉致られ、さらに人身売買ブローカーの中国人まで加わって人死にまくりです(笑)。ベンガルトラによる殺人ショーまであるからね(笑)。

ピアニストの女性が巻き込まれるにはちゃんと理由があって、その裏事情についてはひとつもおかしいことはないんです。裏社会の人間たちが奪い合うあるモノをそんな簡単に作れちゃう?という引っかかりはあるけど、それぞれの行動は気持ちも含めて理解の範疇にある。

タイトルの「タロット」は、W主人公の一人が殺し屋で、依頼を受けるか受けないかとか、なにかあるたびにタロットで占うというキャラクターによるものですが、これはそんなに・・・・・・・アホな感じじゃなかったです。少なくともわたしが想像&期待したようなネタ度はなかった。なんなら普通にハードボイルドですもん。
でももう一人の主人公であるピアニストはヤバイ。目の前で人死にまくってるのにピアノ(コンクール)のことしか考えてなくって、コンクールが終わったあと殺し屋に恋バナ吹っ掛けるとか肝が据わってるとかそういうレベルじゃないだろ。天才とはそういう人種なんだってことでいいけどさ(そんな話じゃないけど(笑))。