西澤 保彦『幽霊たち』

幽霊たち

幽霊たち

殺人事件が起きて、加害者から事情を知っていると名指しされた男が主人公で、被害者が幼馴染であることは思い出したものの何十年も没交渉だし、加害者は同じく幼馴染であり一時は親戚であった男の息子というがこれまた没交渉であるためその存在すら知らないってんで、なぜ自分に話を聞けと言われたのかまったく分からない・・・というところから物語は始まるのですが、これがまあ・・・ごっちゃごちゃ(笑)。最初に家系図があるんですが、これは比較的すっきりしたものなんですよ。そんなに判りにくくも解りにくくもなさそうなのに、読み始めるととにかくごちゃごちゃしてて、しばらくの間は家系図のページに人差し指を挟んだ状態でした(なにかあると家系図を確認しなきゃならないから)。
家系図モノ(そんなジャンルはありませんが)ではあるものの、そこは西澤さんなので親族間で血みどろの争いなんて話ではありませんが、そこは西澤さんなので文字通り愛憎ドロドロ。そういう意味でもごちゃごちゃですが、タッチとしては軽い。物語を構成する要素を抜き出すとかなりハードなものが多いのに、それでもどこかのほほんとしているのはいつもながらの西澤ワールド。どんでん返し(トンデモトリック)こそなかったものの、苦すぎる後味まで堪能させていただきました。