劇団☆新感線『髑髏城の七人』Season月@IHIステージアラウンド東京

上弦の千穐楽をもって、わたしの髑髏城の七人もついに終了です。一年弱この劇場に通いに通いましたわ。トータル何公演観たかはその回数に自分でも引くのでここでは控えますが、さすがに疲れた。精神的肉体的にどれほど疲れていようが4時間を超える公演時間の最中眠くなる瞬間とかないし、観終わったら何食べようかなーとか気持ちが飛ぶこともほとんどなかったけど(1.2回はあったです)、花・鳥・風ときて月の良く言えば真っ直ぐなエネルギー悪く言えば一本調子のハイテンションを受け止めるためのわたしの器は最終的に溢れるどころかそこが抜けてダダ漏れしてる状態でした。個々人が役に慣れ舞台に慣れチームとしての完成度があがっていくにつれ熱量がぐんぐん上がり、終盤のちょい前あたりまではいっけいさん&千葉さんの狸穴ズとしんぺーさんまことさんの贋鉄斎ズが底を支えてくれてたものの体調不良で休演するキャストが出たあたりからそこの熱量もまたぐっと上がり、その圧によりスコンと底が抜けてしまった。まぁ抜けたら抜けたで気持ちよかったんだけど(笑)。

序盤はWチームの見比べ(いいとこ探し)に夢中だったけど、月に慣れてきたところで落ち着いて観られるようになってみると結構「ん?」となる設定や台詞や描写があるんですよ。Wチーム制であるからか演じるキャストによってこれまでであれば変えたであろう設定がそのまま(過去作と同じ)で、超ワカドクロにしたせいであちこちに綻びというか、さすがに強引が過ぎると思えるところが見えてきちゃうんですよね。例えば天の殿様が死んだのは8年前のことだとか、太夫に対する兵庫の恋心とか。

下弦はともかく上弦は福士くんの捨之介に「8年前の俺達は天の殿様に夢中だった」と言われてもどう見ても若々しいので8年前のお前は何歳だったんだよと思ってしまうし、太一の天もそう。せいぜいがまだ25.6にしか見えないけど、本能寺のあとエゲレスとの交渉に8年掛かったって、そらお前がガキすぎて相手にしてもらえなかったからだろう?と、そんなふうに思えてしまう。兵庫の恋心に至っては理解不能の域。これまた下弦はともかく上弦の須賀くんは見るからに最年少なんで、霧丸のことは子供扱いしてる一方で兵庫が太夫を女として「そこまで」想ってることがどうしたって不自然なのよ。

これ野武士に襲われたのが村の娘ではなく兵庫の母親で、その母親の面影を太夫に重ねて今度はなにがなんでも俺が守る!とかさ、そんな感じにしてもよかったんじゃないかとか考えたんだけど、でもそうすると今度は下弦に不自然さが出そうだし、「おっとう」が兵庫を連れ戻そうとすることに理由が必要になるというか、おっとうの物語も必要になるし、霧丸に対する太夫の感情と食い合ってしまうし・・・。

一番無理やりすぎたのは天魔王の鎧を着せられた捨に霧丸が気づく場面。風のように女は斬れないから自分や太夫を斬ろうとすると剣が止まることで捨之介だと気付くのは納得だけど、霧丸は「あんたも苦しんでたからさ」の一言だけで、確かに斬ろうとするたびに頭抱えてたけど、捨がなんで「苦しんでる」のかわかりませんからね。月の捨は天魔王のことを「倒すんじゃない、止めるんだ」と言っていて、それはつまり「殺さない」ということになるんだけど、じゃあ捨之介は誰も殺さない男なのか?というとそうじゃないんですよ。タイトルが出る場面とかおもいっきり斬りまくってんですよ。だから自分たちを斬ろうとすると頭押さえて苦しんでる=捨之介?ってことにはならない。ならないよねえ?。

その前に天魔王から捨之介も自分たちと同じ一蓮托生だと言われ捨之介に斬りかかるも、「その刃がどっちを向いてるのか考えろ」と「いくら斬っても昨日に向かってるんじゃ意味がねえ」と「熊木衆は人殺しの一族じゃなく日の本一の城を作る連中だろう」と言われることで復讐することしか考えてなかった霧丸は憑き物が落ちたようになり二人の間に絆が芽生えるってなシーンがありはするけど、それだけじゃ霧丸が捨之介だと見破る理由としては弱い。だったらまだ「女にはわかるのよ」のほうがなんだよそれ・・・と思いつつもそういうもんかねとなる。
だからニセモノの天魔の鎧をつけさせ仮面に薬(夢見酒)しみこませた天魔王のやり方が温かった、ってことになっちゃうんだよー。天魔王詰めが甘すぎんだよってな結論になっちゃうんだよー。

いやまぁ月の天魔王、特に太一の天魔王は殿への愛と蘭丸への嫉妬をこじらせまくった甘ちゃん以外のナニモノでもなかったんだけどさ。
反対に下弦の鈴木くん天魔王はこの時点まで甘さを感じさせるところはなかったんで、なんで見抜けた霧丸!?感がより強かった。

とまぁそこかしこで「ん?」と思ったりなんかしたわけですが、わたしの器の底が抜けてごちゃごちゃ考えてもしゃーないモードになったらやっぱり楽しかった(笑)。そもそもかなり大雑把な話だし、見たまんま楽しめばいいんだよね。Wのもう一方のみならずなまじ比較対象がいっぱいあるもんだからいろいろ考え過ぎて迷路に入るところだった。

キャストは総じて熱量が高くて眩しかったです。月を語ろうとするとまず『熱量』そして『熱量』さらに『熱量』トドメの『熱量』って感じで、熱量しか出てこないわ(笑)。福士捨とか最後の日曜と千穐楽共に何言ってんだかわかんない(滑舌の問題ではなく絶叫のあまり言葉になってない)状態だったもん(笑)。わたしは捨之介というキャラクターにそこまでわかりやすい「熱さ」というものを求めてないんだけど、ここまで真っ直ぐだといい意味でわたしのイメージなんぞどうでもいいわ!って気になるよね。翔平の蘭もガタイの良さと声の太さと相まって「来い太夫!」の迫力とか歴代蘭でも最高ってぐらいだったし(撃たれても死にそうにない感もすごかったんだけどw)、若さと勢いというものはそれだけで魅力なんだよなーと改めて。

そんななか、だからこそ上弦霧丸・平間壮一くんと下弦天魔王・鈴木拡樹くんの抑えた熱さが印象に残る。例えて言うなら青い炎。太陽ではなくまさに闇夜を照らす月光のような凛とした存在感で、上弦下弦ともに爆発しそうなほどの熱量の根本をグッと握っていたのは壮一くんと麗羅だった。共に役としてそこにいながら全体を見てバランスを取っていて、なんていうか、地に足が付いた演技をしてた。プラス上弦天魔王・早乙女太一くんと下弦兵庫・木村了くんの安定感。欲を言えば太一天魔王にはもっともっと突き抜けてくれることを期待してはいたけど、でもこれ以上突き抜けちゃったらただでさえ愚かで哀れで泣かずにはいられない鎧剥がされる天魔王を直視できなくなっちゃったと思うので、こんなもんでいいです(太一にはとことん甘いわたしですw)(太一の人間椅子になって鼻フックされたいと思うほどにw)。



ってここまで書いたところで極のあとに今度はメタルマクベスをやることが発表されました。ようやっと終わった髑髏城の七人の余韻に浸る間も与えてくれないのか新感線!!。
花鳥風月まとめ感想も書き残しておきたいなと思ってたけどそんなことやってる場合じゃねー!!(チケット取りの算段で)。