劇団☆新感線『髑髏城の七人』Season花@IHIステージアラウンド東京

世界で二つ目の360度回転する劇場のこけら落とし公演、それもキャストを変えて1年間のロングラン公演だなんて、新感線はいまやこれほどビッグなプロジェクトを任される存在なんだなぁ・・・と他人事(いや実際他人事だけどw)のような思いを抱きつつようやっとマイ初日を迎え噂の劇場を体験してまいりました。

うん。まさに「体験」だった。劇場が結構アレでね、満足いく「観劇」ではなかったこともあって観劇というより体験してきたという印象が強く残る初回観劇でした。

というわけで回転劇場ですが、思ってたよりも廻ります。時計まわりにも反時計回りにもけっこう廻ります。360度スクリーン(と言ってもスクリーンとして使えるのは客席の幅だけなんで客席後方にあたる部分は機能しません)に映される映像の効果と相まって実際に回ってる速度より体感としてのスピード感は結構あり、思ってたよりもずっとアトラクションっぽい感じ。
でも「わー」って思うのは最初の数回だけで慣れてしまえば単なる場面転換(の時間)でしかないわけですが・・・・・・。

客席をぐるっと取り囲む360度のステージに大小様々なセットが組まれてて、スクリーンを左右に開けることでそのセットの場所がステージとなる、という機構(演出)なのですが、「大」のときはスクリーンが大きく開く、つまり舞台幅が大きいわけで、こっちは期待通りのスケールで見栄えするけど「小」のほうは正直微妙。なまじ客席が横に広いだけに小さいセットが相対的により小さく感じるのか、天魔王の居室とか狭っ!!って思えちゃう。この場面とか贋鉄斎の作業場とか、サイドブロックだと見えないんじゃなかろうか。「サイド席」として多少の割引はあるとはいえ、見切れってレベルではなくほとんど見えないのではと心配になるほどなんだけど、確実に見所の一つ、というかわたし的にはこの登場シーンの出落ち感に全部!!と言いたい古田贋鉄斎が見えないのだとしたら気の毒すぎる・・・。

かといってサイドでなければ見切れナシなんてことはありません。むしろ見切れまくりです。わたしの座った席は8列41番でしたが、前列のひとつ番号が若い人の頭が下手側の視界をものの見事に奪ってくれまして、特に「大」の場面は下手の芝居がほとんど見えませんでした。夢見酒のシーンぎりっぎり見えたよ・・・(これが鳥だったら奥歯割れるわ・・・)。男性でしたがそこまで座高が高いという感じでもなかったので、よっぽど小柄な人でもない限りこの視界被り状態に大差はないと思うのですが、ブルーシアターより見づらいとか衝撃ですわ。聞いた話拾った話から判断するに見切れナシの席はないようなので(前方席ですら足元が見えないらしい)、それを承知でこれから何度もこの劇場に足を運ばなければならないのか・・・とロングランが始まったばかりだというのに萎える気持ちは否定できない。本命公演まだなのに。

新しい劇場だけにいのうえさんがどこまでこの構造上の「見えづらさ」を把握されていたのかわかりませんが、こういう声は少なからず制作陣に届いていると思うので、「鳥」以降はそれを踏まえた演出になるのではないかと期待を込めて切に切に!願います。

それからこれは劇場とは直接関係ないかもだけど、上演中の私語が気になるなーと。そしたらやっぱり幕間休憩時にさりげなく注意されてて(2件確認できました)、今回はチケット入手ルートがかなり多くあったようなんであまり観劇経験のない人も劇場に足を運んでいるのかなと思ったりしたわけですが(それも企画意図だろうしそのこと自体は歓迎です)、椅子は回るわ小栗旬カッコいいわでテンション上がるのはわかりますがもうちょっと控えめに興奮していただけると嬉しいです。あと見えないからって頭ふらふらさせるのも。

あとは・・・日差しをよけるところが全くないと言っていいので夏は豊洲から歩くと多分死ぬってことと、「花」では休憩中のトイレは右前方の出入り口を目指せということと退場は左側の出入り口からのみってことぐらいかな。飲食関係については方々で「なにもないぞ!!」と語られている通りです。



なんかもう劇場について書いたら感想書き終えた気分なんだけどw、あと2回観る予定なのでちゃんとした感想はマイ楽を終えたところで書く(つもり)として、とりあえずキャストについてのざっくり感想を。

ていうか成河。とにかく成河。成河天魔王のキレっぷり最高すぎた。

キャストが発表された当初ヤマコーさんが蘭で成河が天って配役逆のほうがいいんじゃ?という意見をチラホラ見かけましたが(わたしとしてはヤマコーさんの天魔王はアリってか超見たい!!けど成河の蘭はちょっと・・・でした)、今回天と蘭の関係性を大きく変えて天が蘭のことを「兄者」呼びして媚びてるのね。慕っているのではなく媚びてる。そこにはもちろん蘭丸を担ぎ上げ負の部分を全ておっ被せて美味しいところは自分が戴くぜグヘヘヘという目論見があるわけで、成河の天魔王は捨と天の一人二役をやめたワカドクロで森山未來が作り上げた天魔王の中にあった「小物感」を強烈にとことんまで進化させさらに卑屈さを加えましたってな感じでこれがもう最高です。

本能寺の変で痛めたと言い足を引きずってるんだけど(でも鎧着用時は大丈夫!w)、おそらく観た方のほとんどがそう思ったでしょうがその姿はまるでリチャード三世です。観たい!成河のリチャード三世超見たい!!!(とか観ながら考えてたことで分かるでしょうか?結構早い段階で集中切れてました・・・だって舞台見えないんだもん・・・)。

でもそれは偽りで、誰に対しての本能寺の変で脚痛めた設定だよ?っつったらそれは捨と蘭へのアピールに決まってるわけで、嘘だと明らかになった瞬間つくづくちっちぇえコイツ・・・とか思ってしまったのですが、ほんとは足なんか痛めてないでーすアハハハハー!ってなってからのヒャッハー具合がマジ狂っててほんと最高。

こういう振りきれ方するマジキチ敵をどこかで見た気がするんだけど・・・って観てる間中ずっと考えてたんだけど(だって舞台見えないから・・・)、帰り道でわかった!SAMURAI7で中川アッキーが演じたウキョウ様だ!!。個人的にスッキリ&納得w。

いやあ、成河はほんっとなんでもできるよねぇ。何をやらせてもただ上手いというだけでなく「成河ならではの役」にしてしまうのはほんとうにすごい。
そしてこの成河を受け止めるにはやはり山本耕史ぐらいでなければならないのだろうと。

前述の通り今回は天が蘭を「兄者」と呼ぶし、恐らく年齢設定も見たまんま天より蘭のほうが上ということでいいかと思うのですが、加えて蘭と極楽太夫が二人で無界の里を作ったことがより強調されている(これまでよりも二人の関係性を深めてる)こともあってとてもアダルディなヤマコーさんの蘭なのですがこれは素直に素敵!。“色里の主”感バリバリで、極楽太夫という最高にイイ女に惚れられているのも超納得でしかない。反面ザ・小物な天魔王に煽られたぐらいで蘭丸になっちゃうことに説得力がないんだけど、ヤマコー蘭は多分最初からその気はあったんじゃないかな。ワカの太一蘭があれだけ抗っていたのに対しヤマコー蘭は至極アッサリ蘭丸に戻ってしまうのですが、殿と同じ顔で口説かれるならば即堕ちもやむなしなところはあるけどそうじゃないわけで、だから天魔王の言葉や夢見酒なんかはほんとはどうでもよくって“最初からこうしたかった”ってなところがあるのかなーという気がした。ゆえに無界の里襲撃の残虐鬼畜度がすごい。太一蘭と違って“酔ってる感”皆無だけにマジYABAI。

小栗捨はどストレートにカッコいい。そこそこの回数を見たもののわりと早い段階で天と蘭しか見えなくなってしまったわたしなので小栗捨の印象ってあんまり残ってないものの、ワカのときよりはるかにイイです。歳を重ねたこともあるのかなぁ?小栗旬らしい色気と男気のある捨之介で、これはまぁ・・・キャーキャー言いたくなるわなと。

それだけに今回こそはばっちり百人斬りキメて欲しいと思うのですが、全部古田新太にもっていかれてて心底気の毒・・・・・・。これどうしたって目が贋鉄斎追っちゃうだろうよ・・・・・・。
つーか(バカドクロなら話は別だけど)百人斬りに笑いはいらない派ひたすら燃えたい血沸き肉踊らせたい派のわたしなので、わたしが見たいのはコレじゃないと言っておく。


とまぁ言いたいことはいろいろあるんだけど、この劇場ならではの見事なカーテンコールでとりあえずヨシ!!となれます。『新感線が360度回る劇場で髑髏をやる』わけだからすごいものを見せてくれるのではないかという期待に応えてくれた、とは正直言い難いところがあるものの、このカーテンコールは興奮した。この舞台の機構を最も効果的に活かせたのがカテコだとかちょっと評価に困るところではありますがw、このカテコはこの劇場に足を運ぶ理由として充分です!。