真保 裕一『脇坂副署長の長い一日』

脇坂副署長の長い一日

脇坂副署長の長い一日

タイトルからしてゆるい感じの読み物かと思いきや、地元出身のアイドルが一日署長を務めるその「1日」のなかで政治と金と警察内の権力争いが描かれるどちらかといえば硬派な作品でした。読みながらこのタイトルと装丁逆効果なんじゃ・・・?と思うことが何度もあったけど、でも読み終わってみると内容を一言でズバリ表していると思ったわけで、まぁ・・・これでいいのかな?(笑)。
アイドルを一日署長として迎えるというイベントのため署内がてんやわんや状態の中、管内で事故を起こし破損したと思しきバイクが乗り捨てられた状態で発見される。乗っていたのは署内で要注意人物とされる警察官で・・・という始まりで、捜査上のミスにより今は現場から離れ副署長という立場の主人公が押しつけられる形でその調査・捜査をしつつもそれが表に出ないよう上手く処理することを求められ動き回るんだけど、ノリとしては完全に巻き込まれ型主人公なんですよね。もうひとつの視点として主人公家族(警察官と結婚し家を出た娘)の視点で進む軸もあり、仕事と家庭で同時に問題が起きてあっちからもこっちからもヤイヤイ言われるおじさんの話かーってな感じなんですよ、途中までは。
でも思わぬところで二つの軸が一つになり、そこから一気に警察小説に姿を変える。じわじわと見えてくる、でもなかなか見えてこない真相を追う主人公に引き寄せられる。思いがけず硬派な展開に驚きはあるものの、アイドルの存在を上手いこと活かし読みやすさはそのままで、親子の人情や警察魂というスパイスも効いてて、真保作品のエンターテイメント性が詰まった1冊でした。これも映像化されそうだなー。