中山 七里『TAS 特別師弟捜査員』

TAS 特別師弟捜査員 (単行本)

TAS 特別師弟捜査員 (単行本)

主人公の慎也はまともに話したことのない学園一のアイドルである楓から放課後に話があると言われるが、放課後を迎える前に楓は美術室の窓から落ちて死んでしまう。自殺なのか事故なのか、生徒たちは警察から事情聴取を受けるが、慎也の聴取をしたのは従兄弟の公彦兄だった。楓は麻薬の常習者であることが明らかになり、慎也は公彦兄から学園内の情報を探るよう依頼され、さらに公彦兄は教育実習生として学園に潜入することに。

ってなわけで、従兄弟同士による『バディ×学園ミステリ』(帯より)ですが、期待したような「バディ感」はなかった。二人が一緒に学園内でなにかをすることもなく、誰かに二人の関係がバレそうになってピンチ!なんてこともなく、タイトルの「TAS=TEACHER AND STUDENT」がほんとに単なる「先生と生徒」ってだけとかガッカリだよ。

非公式とはいえ警察官である公彦兄が高校生である慎也を「エス」にしたのは国会議員である学園の理事が圧力をかけたせいで警察の捜査を阻まれたためという理由があるのでそれについてはさして引っかかることはなく、公彦兄が教育実習生として現れ慎也びっくり!ってあたりまではなかなかいい感じだったのに、情報を得るために入ったはずの演劇部で演劇の魅力に目覚めてからは青春演劇物語になっちゃって、それは事件の真相とともにもう一つの軸であり、その経験が主人公にとってとても大きな意味を持つ(ことになったのがラストでわかる)ので必要不可欠な要素であることはわかるんだけど、そうは思えど部活パートがつまらなくてなぁ・・・。どちらかと言えば私は演劇好きですが(見るだけですが)、それでも読んでて全くワクワクしなかったです。挙句二つの事件の真相がこういっちゃなんだけどしょーもないものだったんで、結構な徒労感。