逸木 裕『虹を待つ彼女』

虹を待つ彼女

虹を待つ彼女

第36回横溝正史ミステリ大賞大賞受賞作。
横溝賞受賞作はなるべく読むようにしてますが、この作品は選考委員の有栖川有栖さんが「結末を迎えたところで、その新しさに感嘆した」「こんなミステリを、あなたのような方をお待ちしていました」と絶賛されているので、かなりの期待を胸に読み始めました。
オンラインゲームの開発者が高い技量を持つユーザーを見繕い特別なゲームステージへと導く。それはゲームの世界と思わせておきながら現実世界でドローンを使い渋谷の街を行き交う人間に向かって発砲するというもので、だが実際に実弾が向けられたのは雑居ビルの屋上にいた開発者に対してのみであった。つまりこれは自身が作ったゲームを用いた劇場型自殺であったのだ。・・・ってな始まりで、そこに人工知能が加わり、主人公は天才過ぎて恋愛感情を知らない(周囲の人間と違いすぎるので恋愛感情を持ちようがない)ときたら「ああ、いかにも今風な話だな」という印象で、それはそれでいいとか悪いとかじゃないんだけど(そういうものとして読むだけだし)なぜこれを有栖川さんが絶賛しているのだろうかと、ちょっとおかしな興味でもって読み進めたわけですが、結論から言うと私には有栖川さんが言うほどの「新しさ」を感じることはできなかった。ミステリとしても私の好きな感じではなかったし。でも読み物としては恩田さんのコメントのようにこの話はどこへ向かっているのだろうかと興味を引かれたし、黒川さんのコメントのように読み物として非常に読みやすかった。ネタバレになるのであえてその言葉は使いませんが、今風を最後の最後まで貫き通した真相も見事だったし。
というわけで、作者のお名前をしっかりインプットしておかなくては。