- 作者: 犬塚理人
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2018/10/12
- メディア: 単行本
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第38回 横溝正史ミステリ大賞 優秀賞受賞作です。帯にはデカデカと「推薦!有栖川有栖氏」。
二十年前に起きた中学生による猟奇的な女児殺人事件の映像が闇オークションに出品されていることが判り、映像の流出元は当時の捜査関係者である可能性が高いため警視庁監察課の白石にその捜査の命が下る。
一方カード会社で返済の督促業務を行う江梨子は、出来心からクレームを入れてきた顧客の情報を動画サイトに晒す。江梨子の動画は炎上し、やがて警察が動き顧客は逮捕される。かつてない高揚感を覚えた江梨子は悪人の情報を晒し炎上させることで社会的に抹殺する「自警団サイト」のオフ会に参加し、管理人の弥生、そしてネット界では炎上仕掛け人として有名な龍馬と出会う。三人が次に目を付けたのは殺害映像がオークションで売買されたことで話題となっている事件の犯人、かつての「少年A」。
とまぁこんな感じでなにもかも“どこかで読んだことがある感”しかなく(少年Aは医療少年院を数年で出て現在は名前を変え弁護士になっているだなんて、某シリーズとまんま同じだし)、なぜこれを有栖川さんが推薦したのだろうか・・・?という疑問を抱えながら読み進めていたのですが、設定こそありがちとしか思えないものの『情報を流出させたのは誰・なぜか』と現在進行形で起きている『事件の真相』という二つの謎があり、同じ事件を元にしているわけだからそれが一つになることはわかりきってることだけど、思わぬ形で結びついたのには驚き、そして有栖川さんの推薦に納得。
結構強引というか、そこまでするか?できるか?という人物がいたり描写があったりはするんだけど、そこまでにある程度の下地ができているので心情としては理解できるものだし、その結末もあえて残したのであろう曖昧さを含めて悪くなかった。俺正義を掲げて私刑を行う人間たちにはもうちょっとお灸を据えてほしいところはあるけども。