『カルテット』第3話

蕎麦屋での松たか子満島ひかりのシーンはちょっともうこれ言葉が出ないわ。交わされる会話そのものの面白さ素晴らしさはそれとして、松たか子満島ひかりが渾身のラリー打ち合ってる感じ。凄まじかった。息することを忘れるぐらいって表現があるけどまさにそれ、それぐらい引きつけられたし惹きつけられた。感情を荒げてぶつけ合うとかそういうのはわりとよく見るけど(満島さんとかそういうの多いイメージで、わたしはそういう満島さんが苦手だったりするんだけど)、抑えていながらもお互い相手を呑みこんでしまおうとする感じがほんとすごい。勝つことを目指さない決闘というか。1話から何度も思ってることですが、これまででいちばん「こんなものをタダで見ていいんですかっ!??」と強く思った。脚本が演者によって、演者同士の演技によって、濃度と深度がぐんぐん上がっていくのが恐ろしい。これ最終的にはどこまでいってしまうのだろうかと。
言葉が出ないと言いつつ感想書きます。
すずめちゃんがもたいまさこの手先として働いている理由、カルテットの仲間に知られたくない、それを知って嫌われたくなかったという過去は思いのほか重いものでした。予告からかつて魔法少女として活動していた過去があるのではないかということは予想できたけど、親にさせられていたその過去がすずめちゃんをどれほど傷つけていたのかを、すずめちゃんは今もずっと過去に縛られ続けていることを、そこまでは想像できなかったから驚いたというか、言い方悪いけどちょっと引いた。すずめちゃんの父親とかすずめちゃんの同僚とか、あとまえだまえだとか、なんかもうそういうのぜんぶに引いた。
まえだまえだはおじさんのために(おじさんの病室から出てくるとき涙を拭ってたからおじさんのことが嫌いではなかったんだろう)、あとたぶんそれよりも強い(独善的な)道徳観念と好奇心、言ってしまえば自己満足のために気軽にSNSで「おじさんの娘」を探した。探してあげた。そしてあの動画を見つけ、さらに「つばめちゃん(仮)」のことが書かれたブログを見つけ、それを『他人』であるマキさんに気軽に見せた。
その行為は“たまたまググって見つけた動画を職場で同僚たちに見せた”すずめちゃんの元職場の人間がしたことと大差ない。安藤サクラ(なんというキャスティング!!!)(ただの自己満足の思い出ブログに「私も出ていけというメモを置いた一人だった」の一文を入れたこと。この一文から溢れまくりの自意識。この一点だけで安藤サクラがこの役を演じたことに納得できてしまった)がブログの中で想像していたように、すずめちゃんはずっと、何度も何度もそういう無自覚な悪意、そして自覚のある悪意を向けられてきたのだろう。
まえだまえだに教えられすずめちゃんの過去とその過去が理由でどんな経験を重ねてきたのかを知った(想像した)マキさんは、それでもすずめちゃんに病院に行くよう勧めた。勧めようとしていた。
“どんな親でも親は親。家族なんだから”という、あえてこの言葉を使うけど『常識』でもって病院に戻ろうと訴えていたのかどうかはわからない・・・というか、マキさんが何を考えて稲川淳二をぶった斬ってでも「お父様は亡くなりました」と伝え「病院へ行きましょう」と言ったのか、正直言うとマキさんはあんまり深く考えてなかったんじゃないか、という気がしてしまうのだけど(何の因果か知らないオッサン(すずめちゃんの父親だけど)の臨終の場に立ち会う羽目になってしまったことの“後始末”としてすずめちゃんには病院に行ってもらわないと(気持ち的に)困るとか)、とにかくカツ丼が運ばれてきたあたりまでは「病院へ行こう」派だったわけだよね。
でもマキさんは、すずめちゃんの話を聞いて、すずめちゃんの中にいる「父親」がどんな人間であるかを知って、「怒られちゃうかな」「やっぱり家族だから行かなきゃだめなのかな」というすずめちゃんの心の叫びを聞いて、そしたら「病院行かなくていい。軽井沢へ帰ろう」と即決してくれた。「(行かなくて)いいよいいよ帰ろう」ってなんでもないことのように言ってくれた。「(行かなくて)いいの」と力強く言い切ってくれた。
マキさんの中でどんな変化があったのだろうか。
まえだまえだの話を聞いたところまではすずめちゃんと父親の関係に対し傍観者のような立場だったけど、すずめちゃんの話を聞いてその気持ちに同調した・・・とか?。
であれば死ぬことでそれまでの行いが赦されるなんてことはないと、酷い人間ならば家族なんだからって許す必要はないと、マキさんはそう思ってる・・・のかなぁ?。
そしてマキさんの周りには「居なくなった夫さん」という存在がいるわけで・・・・・・。
自分の過去を、どんなことをしていたのか知られたら居場所がなくなると思った、嫌われたくなかった、というすずめちゃんに同じシャンプー使って同じお皿やコップを使ってパンツもなにもかも一緒に洗って、それって家族じゃないけど家族みたいなものじゃないかと言うマキさんは、自分のためにそう言った・・・ように聞こえたかなぁ。マキさんにとってこそドーナッツホールは「居場所」で、その居場所にすずめちゃんの存在は欠かせないから、だからすずめちゃんを守ろうとしたのかなーという気がしてしまう。もっとはっきり言うならばすずめちゃんを捕えようとしているのかなと。
どうにもこうにもマキさんには底知れなさを感じてしまって、言葉通りに受け取れないというか、その裏に何かあるんじゃないか!?という疑念が付きまとうのだけど、でも「泣きながらご飯食べたことがある人は、生きていけます」ってのだけは本心からの言葉だと思う。マキさんもそれを誰かから言われたのかもしれないし、自分が今それを体現してるからかもしれないけど、マキさんも泣きながらご飯を食べたことがあるんだろうね。
マキさんのその言葉を聞きながらすずめちゃんが食べるカツ丼はどんな味がしたんだろう。
すずめちゃんがマキさんの義母(だと今のところは視聴者含めその態で話が進んでる)に頼まれたのは「かけがえのない友達になったところで最後に裏切ること」なわけだけど、今回のことでマキさんはすずめちゃんにとって「かけがえのない居場所(に一緒に戻ろうと言ってくれたひと)」になったのかなと思うわけで、だけどすずめちゃんはまだ肝心なことをマキさんに言ってないわけで、それはマキさんが抱える(抱えているかもしれない)秘密に繋がっているわけで、それを踏まえるとこの「居場所」がこの先どうなるのか楽しみだけどとても怖い。
怖いと言えば有朱ちゃんですよ・・・。次々と学級崩壊を招き淀君というあだ名をつけられる中学生?ってどんなだよ!!?。
アップルストアで働いてたのに今では朝からパチンコ屋に並んでるって、有朱ちゃんに堕落させられた「例」としてわかりやすいかつリアルで思わず笑ってしまったけど、元々その程度の男だったんだろうってのはそれとして有朱が“そういう人間”であると一番身近にいる家族が証言してるってところが「うわあ・・・」感。
このタイミングで有朱がそういう人間であることが描かれたことには当然意味であり理由があるだろうわけで、かつて学級崩壊しまくっていた有朱は現在進行形で何かを崩壊させようとしているということだろうか。
マキさんにとってドーナッツホールは「居場所」だと前述しましたが、家森さんとすずめちゃんを取っ掛かりとして淀君有朱が崩壊させようとしてるのがその「居場所」だとするならば、出会った瞬間から有朱の「目が笑ってない」ことに気付いたマキさんがそれを許すはずがなかろうわけで、これまたどうなるんだろうとドキドキである。
でもアップルストアからパチ屋の例からして有朱が壊すのはドーナッツホールと見せかけて谷間さん夫婦ってなこともありそうだよな。そしたらマキさんはどうするんだろう。他人の夫婦のことなんてどうだってよさそうだけど余命9か月のピアニストを追いだして奪った「演奏場所」であるわけで、いずれにしてもドキドキである。
いつもと違う感じの衣装を身に着け、弾き始めた曲を「やり直していいですか」と言って別の曲を弾いたすずめちゃんでしたが、すずめちゃんにチェロを教えた「白いひげのおじいさん」とは誰だったのだろう。
チェロを見つけそこで弾いていたという物置が外(家屋の中ではない)にあったんだとしたら近所のおじいさんって可能性はあるけど、その可能性のほうが高いのかもしれないけど、でもそこでBGMと言っていいのかな?すずめちゃんがマキさんに過去を語るうしろで稲川淳二の語りが流れていたこと、(すずめちゃんの心情と稲川淳二の語りが何気にシンクロしてたことのほかに)そこに意味があるのだとしたら、チェロを弾いていたすずめちゃんの「お祖父ちゃん」なのではないかと思う。思いたい。テレビで披露していた「魔法」はインチキでも、亡くなったお祖父ちゃんからチェロを教えてもらったすずめちゃんはやっぱり魔法少女だったんじゃないかなって。
ていうかさ、こういう過去を持ちこういう経験をし続けてきたすずめちゃんは、なぜ別府さんのことを好きになったのだろうか。OL時代のすずめちゃんから今のすずめちゃんの間でどれくらいの時間が経過しているのかわからないけど、OL時代のすずめちゃんは他人と必要以上の関わりは持たないようにしていたわけだよね。そんなすずめちゃんが自ら別府さんのベッドにもぐりこみペットボトルの距離感で誘惑し(これ、動画が送られてきたことで自分のしてきたことがバレてしまうと思って、もうここには居られないからってんでこういう行動に出たのかな)、でも「お腹空いたの?」ってドーナツ渡されてしまったものの結局自分から「WiFi繋がりました」するって、すごくすごいことなんじゃないかと思うの。有朱の誘惑アドバイスのことは置いておくとして。別府くんのなにがすずめちゃんにそうまでさせたのか。すずめちゃんを変えたのか。その理由を早く知りたくてたまらない。
でもそれがどんな理由であっても、それとは関係なく別府くんが愛おしい気持ちはものすっごくわかります。共感できます。
あの状況で「またWiFi繋がらない?」とか聞いちゃう行間の読め(読ま)なさ、ボーダー被りを避けるために着替えたら今度は白シャツ黒カーデ被りしちゃう別府くんの「周り見えてない感」が愛おしすぎる。そら家森さんが呆れモードで「ダメじゃん」言うわなとw。
つーか「ウルトラソウルッ!」と家森さんにご唱和を求められそれに結構なテンションで乗っかる別府くんイイ奴だけどアホww。
(マキさんが一人でいるところにすずめちゃんあての連絡があって、事情を知ったマキさんは千葉の病院に駆け付けたってことだと思うのだけど、そのことをマキさんは別府くんなんし家森さんに伝えたよね。で、すずめちゃんの帰りを待つことしかできない男二人は別荘の周りをイルミネーションで飾り付けた。基本鈍いしめんどくさいけど、優しいよね、別府くんも家森さんも)
で、コンビニにメッセージ性の強いパンツしかなかったからそれを買うしかなかった&穿くしかなかったのはわかる。でもそれをなぜあのポーズで別府くんのみならず女性陣にも見せるんだ家森さん!!。
すずめちゃんが暖炉に投げ飛ばした衣服らしきものがまさか家森さんのランジェリー(笑)だとは思わなかったんだけど、あれトランクスだよね?。トランクスだったらまあノーパンでもそんなに違和感はないか・・・と妙に納得。下着のことをランジェリーっていう家森さんほんとめんどくせえ(笑)。
ていうか「ランジェリー貸してあげて」「ランジェリー貸して」って、貸してくれたら別府くんのランジェリー穿くんですか家森さん!!!??。
謎の男からの呼び出しメールを受けて「ウルトラソウル?」で作り笑いで拳を小さくきゅっと上げる高橋一生最強ですよね。
ってなわけで、次回はついに家森さんの事情が明らかに!!!。
家森さんを「みーつけた」した謎の男の目的はどうやら家森さんと一緒に写真に写ってる「女」のようですが、その女と家森さんの関係がどんなものであれ、マキさんと繋がる要素は今のところ全く見えない・・・よなぁ。ものすごく短絡的に結びつけるならばその女と失踪したマキさんの旦那に何らかの関係があるとか?だけど、だとしたら女の行方を聞きだしたい謎の男が家森さんを探してたということはマキさんに近づいたことに謎の男は関わっていないということになるわけで、ということは家森さんが偶然を装いマキさんと出会ったのは家森さん自身が起こした行動ということになろうわけで。逆にすずめちゃんと別府くんは偶然じゃなかったけど家森さんだけは正真正銘偶然ってこともあるかもだよね。とにかく家森さんは三人とカルテットやりながらこんな生活してる理由がわからない謎の存在・立ち位置なので、それが明らかになるであろう次回は心底楽しみ。
それはそうと軽トラの荷台に乗るもたいまさこが気になりまくりです。