深町 秋生『卑怯者の流儀』

卑怯者の流儀 (文芸書)

卑怯者の流儀 (文芸書)

現在警視庁組対四課に勤務する米沢秀利。元は優秀な刑事だったが五十を過ぎた今では警察(刑事)としての権力・技術・能力を使い、相手が同じ警察官だろうがヤクザだろうが構わず報酬を貰い揉め事を収めるトラブルシューターのような裏仕事を請け負っている。
ってな設定で、警察官に持ち込まれる案件なんで当然犯罪絡みなんで“トラブルシューター”という言葉から受ける印象よりもずっとヘビーでハードですが、でもやっぱりトラブルシューターという言葉が相応しいと思う。で、なぜそう思ったのか最後まで読み終えると腑に落ちた。米沢がなぜ“現在のような刑事”になってしまったのかということが最後の2篇で描かれるのですが、米沢には米沢なりの正義があって、それはかつてと変わってないことが分かったから。
まぁそれであってもやってることは完全に悪徳刑事のソレなんで、米沢の現在に対しそういう過去があることは原因ではあるけれど理由にはならないから悪は悪なんだけど、でもなかなか素敵な悪の警察小説でした。
この主人公ってビジュアル的には全然カッコよくないんだけど、もしこれを深夜ドラマあたりで映像化するとしたらカッコいい中年俳優がやるんだろうなーとか思いながら読んでいたのですが、でも『身長180センチ近くて体重が推定でも90キロ超え、屈強な部下(男性)たちを腕力で屈服させる上司の女管理官』を実写化するのは不可能・・・だよな。この上司、私がこれまでに読んできた小説に登場する“女性警察官”の中でも有数のカッコよさなんだけど、このガタイこの腕力このキャラクター性は絶対に変えちゃいけないし、この人の存在あっての主人公なんで絶対に必要だし(でもそれを改変しちゃうのが今のテレビドラマ界なんだよな・・・)。