- 作者: 永田俊也
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2013/11/26
- メディア: 単行本
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冒頭で主人公である一ノ木薫が身体と心に傷を負いネゴ屋として交渉にあたることを決意するまでが描かれ、以降は「元教師である初老の女性」「歌劇団を退団したトップ女優」「選手としてのピークは去った40歳のプロ野球選手」それぞれを相手に依頼された「交渉」を成立させるために奮闘する話になります。
交渉相手となる三人それぞれにネゴ屋という第三者を介入させなくてはならないほど頑固に交渉内容を拒否(拒絶)する理由があって、主人公はその理由を知るために自らを曝け出し心を通わせようと努力するんだけど、元警察官とはいえ交渉について特別な訓練を受けたわけではないので体当たりするしかないんですよね。元刑事という要素はほとんど活かされない。そこがちょっと惜しいかなーとは思ったものの、でもとにかく主人公が前向きなので読んでいて気持ちがいい。全体を通して描かれるのは交渉相手の三人と過ごした時間、交わした会話、教師・女優・プロ野球選手として三人それぞれのプライドやポリシー、そして人間性に触れることで主人公が過去を乗り越えるのではなく“消化”し、新しい自分として一歩を踏み出せるようになるまでなんだけど、そこに焦点がしっかりあってて筋が通ってる。
その上で、3本の短編全て交渉相手がカッコよく、ニヤリとなるオチまで含めそれぞれの物語としても充分楽しめました。面白かった!。