『真田丸』第29回「異変」

今回のMVPは間違いなく片桐さん。
片桐さんが普段使いしてるお布団と太閤殿下のお布団じゃ質がぜんぜん違うだろうに、それ以前に自分の寝間着が濡れてないとかおかしな点はいろいろあるだろうに、自分がやったと思い込んで胃を痛めちゃう片桐さんってほんと・・・・・・そういう星の元に生まれたんだろうね・・・。つーか普通なら寝小便をしたなんて他人、それも他大名になんて絶対知られたくないだろうに、自ら言っちゃう片桐さんってばどんだけ嘘がつけないのかと・・・・・・。
片桐さんにおっ被せるだなんてひどいことを思いつき、それが見事成功しちゃうとか三成ってやっぱり有能のベクトルがアレなんだけど、でも介護疲れが見える寧様にキツイこと云われちゃうのは可哀想だった。形部さん不在の中ひとりで必死にフォローしてるのにね・・・。
そしてこれまでずっと豊臣の母としていつ何時でも大きな愛でもってみんなの支えでありつづけた寧様ですらもはやこんなことを言ってしまうとは・・・と、いよいよもって豊臣の終わりが見えてくる。
三成や信繁が決して殿下一人になにもかも押し付けてるだなんて思ってないし、それぞれがそれぞれの為すべきこと出来ることをやってることぐらい分かってるんだろうけど、なによりも殿下に起きていることが“誰かのせい”ではないことを寧様が一番分かってるんだろうけど、それでもというか、だからこそかな、言わずにはいられなかったのだろう。
頭は白いのに真っ黒の付け髭を付ける不自然さに気付かない?とか、同じことを何度も繰り返して言ってしまうとか、味覚や嗅覚がおかしくなってるのとか、次から次へと続く「呆け」た描写に、大河ドラマのなかで「老い」をここまで真正面から描くことに気が滅入ったけど、なかでも「儂は壊れてしまったのか?」と信繁に聞く秀吉が「ヒロイ」のことを「ステ」と呼んでしまうのが一番キツかった・・・。キツイというか、哀しい。
そして夜のMVPはお兄ちゃん。まずはね、おめでとうと言っておく(笑)。信幸が稲に抱きつかれたときのBGM遊びすぎだろ(笑)。
信幸が「徳川の人間」であるという意識をわたしはさほど明確なものとして持ってなかったんで(前回まで豊臣から与えられた官位についてウダウダ愚痴ってたぐらいだし)、「そのときが来たら徳川に付く」宣言にはちょっと驚いたというか、え?そうなのってな感じなんだけど、徳川の娘との間に子が出来たことでお兄ちゃんの中で「徳川に付く」という決意が固まったのかなーとひとまず納得。
で、お兄ちゃんはその決意をもったうえで、弟に秀吉の具合を問うた。お前が豊臣にいるのは「真田のためだ」と前置きというか、念押しをしたうえで、そう問うた信幸に「何も変わらない」と信繁は答えた。
思うに、最初に聞かれた時は信繁の中で己の立場というものを決めかねていたところがあったんじゃないかな。もちろん「真田」の人間だしそのつもりで秀吉の側にいると思ってはいたけど、『その後』について兄との考えが180度違ったことで自分は今真田よりも豊臣のことを、豊臣の側に立って考えていることに気付いたんじゃないかな。
そして兄もまたそんな弟のことを分かってしまい、だから「お前は豊臣家に肩入れしすぎではないか」と諌めた。
その言葉に自分の立場を見失うなと、守るべきものを間違うなと、そんな思いが込められているとわたしは感じたのだけど、その上で改めて弟に問うたものの答えは変わらなかった。
二度目の問いとその答えが何を意味するのか、兄も弟もわかってるのだろう。『その後』について考えはしてもこの先に別離が待っているだなんて今はまだ思いもよらないでしょうが、その時がきたらお兄ちゃんはきっとこの夜のことを思いだして悔やんだりするんだろうな・・・。