『RADIANT BABY〜キース・へリングの生涯〜』@シアタークリエ

東京千秋楽を観終えたらまとめ感想を書くつもりで毎日ちょっとずつ感じたことを表現する言葉を探してたんだけど、東京公演残り2公演ってところで恐れていたことが起きてしまい、それも主演の柿澤勇人くんが怪我をするという最悪の事態になってしまい、それまで感じたこと、思っていたことが全部吹っ飛んでしまった。なので感想書くのやめようかな・・・と思ったんだけど、でも「俳優人生でこんなに悔しい思いをしたことがない」とボロ泣きしながら言うかっきーを見て、これは絶対もう一度キースを演じなきゃならないと、ここまで頑張ってきたかっきーに「やりきった」と思って欲しいと、そう強く願わずにはいられなくって、だから必ず再演があると信じて、その時のために感想を残すことにしました。イエス言霊!!!!!!。


前日のマチネで怪我をしてしまい、ソワレは一部演出を変更してやったという情報だけ目にしてて、どれほどの怪我なんだろうと心配しつつも上演できるってことはそんなにひどい状態ではないのだろうと希望を込めて思いながら千秋楽を迎えましたが、登場した瞬間から足を引きずってて、明らかに動きがおかしいかっきーに思わず真顔になりました。心配通りこしてこんな状態の人間を舞台に出していいの!?と。だってキースが歌う1曲目を終えた段階でゼエゼエ息切らしてんだよ?。あれだけ飛んで跳ねて転がって、躍動感あふれまくってたキースが息絶え絶えになってんだよ?。どう考えても怪我の影響じゃん。痛みを堪えてもいるんだろうし、痛めた足を庇うことで身体に負担もあるんだろうけど、でもまだ1曲目だよ!?始まったばっかりなんだよ!?それでこれって・・・と、まさかここまで酷い状態だなんて思わなかったから驚きとショックで冷静に物語を追うことなんてできなかった。

なるべく動かないようにはしてるんだろうけど(そういう演出に変えはしたんだろうけど)、でも動いちゃうんだよね。いくら演出を変えたといっても限界があるってか、セットは段状だし物語的にも動く必要はどうしたってあって、そのたびにかっきーは片足で跳んだり足を引きずりながら段を昇ったり降りたりしてて、ほんともうやめて!そんな動かなくていいから!!と思わずにはいられなかった。

でもこの心に身体がついていかない感じ。心はもっともっともっと!と求めているんだろうに身体が思うように動かない感じ。
かっきーの状態がどんどんとキースの心と身体に重なっていくんです。

エイズを発症し、クワンとアマンダを拒絶したキースが子供からの手紙を読む場面、手紙を読んで自分のやるべきことを思いだす場面、痛めた足を拳で殴りつけ顔を真っ赤にし涙を流しながら叫ぶように歌う柿澤勇人のキースをわたしは一生忘れないと思う。舞台上でこれほど痛みや苦しみを感じている人をわたしは見たことがないから。その痛みと苦しみが演じる役に重なってしまうことも。それが客席にここまで届くことも。

怪我してしまう前もキースはかっきーでかっきーはキースだと感じさせられたけど、千秋楽のかっきーキースはそれとは全然違うところで結びついてしまった。

たぶんこのあたりではもう限界を超えてたと思うんだ。肉体的にも精神的にも。
そのせいだろうか、白い服に着替えたキースとクワンが語りあう場面の無力感・・・・・・・という表現でいいのかなぁ?もっともっと生きて描きたかった、残された時間を生ききりはしたんだけど、でも『もっともっと』という想いは叶わないという現実を受け入れるというよりも諦めてしまった感じ、かっきーのキースを支える壮一くんのクワン含めこれはそれまでとは比較にならないほどの虚無感だった。すごかった。ほんとうにすごかった。

でもこれは柿澤勇人が演じたかったキースではないだろう。ないよね。
最後の最後でこういうことになってしまったことで、それまでの頑張りがちょっと違う印象というか、アクシデントにも負けずキャストスタッフそして客席がかっきーを支え盛り上げましたー的な、そんな後味になってしまったことは確かだし。

階段に加えスロープがあるセットは今にして思えばなんの意味があったのか(それが効果的に使われていたとは思えない)って感じだし、怪我する前と後を見比べてここまで激しく動く必要があったとも思えないから(動かなくとも充分伝わってくるものはあったし、むしろ動かないぶん想いが強く届く場面すらあったし)、かっきーだけが悪いわけじゃないとは思う。
だけど主役として、取らなきゃいけない責任、背負わなきゃいけないものはあるよね。特にこれから。
今かっきーがどれほど自分を責めているのか、それを想像するのが怖いんだけど、でもしっかり治してもう一度キースを演じて欲しい。キースを演じきるかっきーが観たい。

舞台上で役を演じているのにこれほど足を引きずってるってことは捻挫程度じゃないんだろうとは思ってましたが、アキレス腱断裂なんて大怪我となると元の状態に戻るまでにはかなりの時間がかかるだろうし、ていうかもしかしたら今までのようにはいかない(そういう演出をつけられない)ということになるかもしれないけど、それでも柿澤勇人とこのキャストたちがもう一度揃ってこのイカれた舞台に立てますように、立たせてくださいと演劇の神様に祈ります。



カーテンコールで立っているのがやっとのかっきーを支える洸平くんはすこぶるヤバかったです・・・・・・。
下げた頭を上げるときにちょっとバランス崩れちゃったかっきーがノールックで隣の洸平くんの腕に掴まったり、袖にはけるときに最初は肩を組んだんだけどすぐ手を解いてかっきーの腰に回して支え直す洸平くんだったり、そのまま一緒に捌けるのかと思ったらかっきーひとりでもう一度頭を下げてくれたんだけど、そこで洸平くんはかっきーひとりにすべく捌けたんだよね。でも舞台ギリギリのところでかっきーを待ってて、そんでまた腰を支えて消えていくとか最後の最後まで素敵だった。かっきーがボロ泣きで謝罪の言葉を述べると客席はもちろん舞台上も涙涙で(とくにSHUNさんが顔を覆って号泣してて、エリアンナちゃんに宥められてた)、壮一くんは泣きながらかっきーの背中をさすってあげたりしてるなか、洸平くんだけは口をギュっと閉じて宙を睨むような表情だったんだよね。それがとても印象的だった。

カルロスの洸平くん、わたしの松下洸平史上一番すき。

かっきーを心配する気持ちに嘘はないけど、そこに余計なものは入ってないんだけど、でもこれはこれで別腹ですとか思ってしまったわたしはほんとうにクズです・・・・・・。