中村 航『小森谷くんが決めたこと』

小森谷くんが決めたこと

小森谷くんが決めたこと

前半はほんっとにどこにでもいそうなバカ男子・小森谷くんの話がダラダラと続くんだけど、ごくごく普通(普通ってなんだ?論はここではおいておいて)の青年だった小森谷くんが周囲の心配と勧めによって行った病院で余命2か月の宣告を受けてからがすごかった。怒涛の展開が待っていた!とかそういうすごさじゃなくって、小森谷くんという一人の人間の「在り方」そのものがすごかった。
どこかで読んだインタビューで中村航さんがやっぱり“ガン告知で余命2か月”ってところが中心になってしまう(それを描くことになる)と思ったんだけど、でもそれはしっくりこなくって、全部書かなきゃだめだなってことになってこういう形になったというようなことを仰ってたんだけど、確かにそれまでのダラダラ人生があったからこその「すごさ」なのだと思う。そしてなんだかんだで『人』なのかなーと、実写化したら間違いなく一番オイシイ役であろう悪友をはじめ周囲の人間が小森谷くんを作り、そんな小森谷くんもまた誰かにとっての大切な人なんだと、そんなことを考えつつ、もう出会いもなにもねーよーとか思いながらもでも、でもでも頑張ってればいつかきっと私にも大切な人ができるかもしれない(異性に限らず)・・・なんて思ってしまう力が中村航の小説にはあるのです。