中村 航『さよなら、手をつなごう』

全部が全部じゃないけれど、中村航の作品は「恋」を扱ったものが多い。
そして私は恋愛小説が苦手です。
だからなぜ自分が中村航が好きなのか、その理由が分からなかったんですよね。他の作家さんならばこれこれこういうところが好きだと言えるのに、中村航だけは言えなかった。「なんだかわかんないけど好きなの」としか言えなかった。
でもこの作品のあとがきを読んでなんとなくだけど、わかった気がする。

 (前略)あちこちで書いた短い小説などを集めてみたら、意外と“物語”色が強くて驚いた。そしてどれも、“さよなら”のモチーフを含んでいる。
 さよなら青春、さよなら初恋、さよなら君のイノセンス、さよならブルー、さよなら我が青春のボクシング、昨日のシャツにさようなら―――。
 さよならに抱かれて、僕らは生きているのかもしれない。(後略)

私は中村航の描く「さよなら」が好きなんだ。
“あの頃”に戻りたいではなく、“あの頃”に縋るのでもなく、“あの頃”にさよならをして今の自分がいる。
『さよならに抱かれて、僕らは生きているのかもしれない』
って、ものすごく気恥ずかしい言い回しだけど、でもなんかすごく、わかる。わかる気がする。
だからここで改めて宣言します。
私は中村航が好きだーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!。


巻末に中村さんが詩を担当された『ぱぐ ぐぐぐ』という絵本が収録されているのですが、これがもう泣くほど可愛いの!!!。
『inspired by 五味太郎「さる・るるる」』とありまして、まぁこの時点でどんな感じが分かってしまうでしょうが(笑)、ここで『ぱぐ(バグ)』という存在を持ってくるところが私の大好きな中村航なのよおおおおおおおお!。
一人、いや、一頭の『男』の人生、いや犬生が描かれているのですが、とにかくもう・・・泣けるから!もし書店でこの本を見かけることがあったらこの『ぱぐ ぐぐぐ』だけでもぜひ読んでみてください。そしたら絶対この本が欲しくなっちゃうから!。