- 作者: 大倉崇裕
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2013/02/21
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (17件) を見る
森谷明子さんという方も巻末の解説の中で描かれていますが、叙述というスタイルで名探偵VS犯人を描く場合、名探偵サイドに物語は不要なんですよね。それが必要なのは犯人側。犯人がなぜ犯行に至ったか、なぜ殺人という手段を選んだのか(選ばざるをえなかったのか)、そこにドラマがあって、そのドラマは共感でも反感でもなんでもいいけどとにかく読み手の感情を揺さぶるものでなければならない、と私は思うのですが、3編どれもロマンというか美学というか、そういうものがしっかりとあって、だから犯人に肩入れしたくなるんですよね。犯人が魅力的であればあるほどその犯人をじわじわと追い詰めていく名探偵を頼もしく、そして恐ろしく感じるわけで、最近は探偵役のみならずワトソン役とセットでごちゃごちゃと設定を盛ってる作品が増えてきたように思うのですが、やはり名探偵は魅力的な敵=犯人がいてこそだよなーと改めて思った。そういう意味で最後に収録されている「女神の微笑」のあと味は爽快!。