堂場 瞬一『暗転』

暗転

暗転

300人以上もの死傷者を出した列車転覆事故に遭った雑誌記者と、婚約者をその事故で亡くした男性が、事故によって世界観が変わってしまいながらも懸命に生きようとする物語・・・かと思いきや、いつの間にか被害者の聴取に手伝いとして借り出された定年近い派出所勤務の警察官と事故を起こした電鉄会社に勤務する社員視点による事故原因の追究話(会社ぐるみの隠蔽を暴く話)になっててややポカーン。なんとなくまとまった、というか、無難なところでまとめたなという感じではあるものの期待していたほど各人の心理面での掘り下げはなされなかったので結局これは何を描いた作品なのだろうか・・・感は否めず。
とはいえ、ギュウギュウの満員電車に揺られながら読むのはさすがにちょっと怖かった(私の読書は常に通勤電車の中です)。自分が乗ってる電車がそういう事故を起こすのも運だし、車両のどちら側を下にして横転するかもまた運でしかなくて(これはどっち方向に重力が掛かっているかで判断は可能ですが、どこで横転するか分からないという意味ではやはり運かと)、まぁそれは列車事故に限ったことではないんだけど、でもやっぱりそういうものに生死を左右されるってのは恐ろしいことだなと思いながら堪能しました(ドMの本領発揮)。