笹本 稜平『所轄魂』

所轄魂

所轄魂

先日戸梶圭太さんの「迷宮警視正」を警察小説だと書きましたが、あれ嘘。全然嘘だった。
とこれを読んで痛感いたしました(笑)。
死後まもない女性の遺体が発見され管轄署に特捜本部が立つが、担当管理官はこれが捜査責任者として初めての臨場となるキャリアの息子だった・・・という物語で、元捜査一課の刑事でありながらも妻を亡くした喪失感から自ら所轄への移動を希望したその父親の目線で描かれるというちょっと変わった警察小説なのですが、これと比べたら迷宮〜はやっぱ違うわ(笑)。
「所轄魂」とタイトルにあるようにまぁ歯車扱いの所轄が捜査一課を見返すってなよくあるパターンではありますが、捜査一課と一緒になって所轄を単なる頭数としか見ないか、めちゃくちゃな指示で現場をかき回すか、もしくは傍観者としての立場であることが多い“管理官”を所轄のトップ(デスク)である主人公の父親としたことで捜査一課(の担当班)を完全なる『悪』として描いてるところが単純ではあるけど面白い。事件自体は派手なものの捜査の現場は地道で泥臭くて、犯人逮捕へ向けての描写がひとつひとつ堅実で、それに加えて親子の情愛というか、出来のいい息子を背中で導く泥臭い父親という軸もあって、重厚だけど読みやすい警察小説、でした。