安東 能明『第II捜査官』

第II捜査官 (文芸書)

第II捜査官 (文芸書)

圧倒的な捜査能力・検挙率で特別扱いされている元高校教師(そこそこイケメン)の刑事とその教え子であり捜査一課唯一の女性刑事のコンビってところに惹かれて手に取ったのですが、その警察においては特殊な経歴であり関係性が部下である女刑事が二人っきりの時や心の中で問いかける時だけ「先生」と呼ぶ(人の目があるところでは「せんせ・・・神村さん」と何度も言い直す)ってだけで本筋(事件)に対しては何ら活かされず、この女刑事は紅一点であることと、恐らく上司である神村の「元教え子」という立場であることもあって署内の女性職員たちから嫉妬されてて実際にそういう描写もあるんだけど、それって男社会で働く女にとって相当重要な要素だろうに同性からそんな風に思われてることに対して苦しんでる描写は一切ないんですよね。
前もって決まってた月イチの女性職員飲み会を捜査の都合で欠席することになり“今ごろ捜査のことで捜査一課の悪口大会になってるんだろうな”とか考えてて、いや違うって、捜査一課じゃなくてあんた個人の悪口大会になってるに決まってんだろと。捜査中にレイプされ全裸状態の姿を同僚に見られても「大丈夫です」って引き続き捜査に参加してて、強がってんのかと思ったらその後一度もそのことについて苦しむどころか思い返すことすらなかったりと鈍いのかなんなのかわかんないんだけど、そのくせ先生が自分と誰々の関係を想像してるんじゃないかとか女にデレデレする先生に立腹したりとか「女性刑事」として全く魅力がない。当然そんな女の目を通して描かれる「先生」もまた魅力的になるはずがない。
警察小説としても係長という立場にあるものが尋問中に容疑者を連れて逃走し心中した!?という発端は悪くなかったのに最終的にはヤクザ同士の争いなんて話になっちゃって、とにかく期待外れの一言。