中村 ふみ『裏閻魔2』

裏閻魔2 (ゴールデン・エレファント賞シリーズ)

裏閻魔2 (ゴールデン・エレファント賞シリーズ)

昨年のマイベスト10に入った作品の続編です。
手に取った瞬間感じたことは「ずいぶん装丁変わったなー」ということでした。別にキャラ絵などではないのにそれでも前作はいかにもラノベっぽい印象を持ったんだけど、今作は逆に書店で埋もれてしまうのではないかと心配になったぐらいにシンプル。刊行してみたら事前に予想してた読者層と違ったってことなのかなぁ?。
というわけで本編ですが、やっぱこれ面白いよ!。ヴァンパイアもの好きには本気でオススメだし、黒執事とかダークファンタジーが好きな人にも全力でプッシュしたい逸品です!!!。
もうね、永遠の青年・閻魔の

信正はおれだけのモンじゃねえからなあ。

ってコレ!この一言にズキュンですよもう!。過度に“それっぽい描写”があるわけじゃないしそういう話でもないのだけれど、行間から零れるようにしてお互いへの強くて複雑な心情が伝わってきて、それはやっぱり「色気」と表現すべきだと思う。メインは閻魔の奈津への思慕なんだけど私はやはり信正との関係性のほうが断然ソソられますっ!!。
そして、このシリーズの面白さというのは鬼を自らに宿す二人の美青年の目を通して幕末から戦後という時間が描かれることにもあって、そのさりげない描き方も好みです。例えば、あらゆる情報を得られる立場の人間=現代からみた歴史上の偉人や有名人等をモデルにしたような人物を出すことも可能だと思うんだけど(そういう人にとっては二人の存在は何がなんでも手に入れたいものだろうし)、そういう雰囲気は全くない。日陰の身らしくあくまでも関わるのは市井の(やや裏寄りの)人々で、時代の流れにかたや揺蕩うようにかたや抗うように翻弄される様が自然に描かれているのがとても好ましいと思う。前作はそこここにあらゆる意味での「闇」がある時代だったので、閻魔たちは人間にとってはむしろ「妖(あやかし)」に近いような存在であったのが、戦争が終わりテレビやクーラーが登場するという云わば“現代”に移ったことで、今度は「バケモノ」でありながらも「欲望の対象」になっているのが面白くも心が痛い。もっともっと続いて欲しくはあるのにどうやら次が最終巻(3部作構想)のようで、二人の行く末に何が待っているのか楽しみです。