伊坂 幸太郎『バイバイ、ブラックバード』

バイバイ、ブラックバード

バイバイ、ブラックバード

抽選であたった(?)50人だけのために書かれた1篇ずつの「ゆうびん小説」に書き下ろしの1篇を加えた本だそうですが、これもし私の手元に届いたらポストに入ってるのを見た瞬間はものすごく嬉しいと思うだろうけど「5股男が女たちに別れを告げる話」ってなぁ・・・(笑)。確かに一番身近な「別れ」ってのは男女間のソレだとは思いますが、例えばいつも自然消滅でちゃんと“別れる”ことをしてこなかった男が自分の人生を振り返る意味でもかつて付き合った女性たちにちゃんと別れを告げに行く(告げられに行く)ってな話でもいいと思うんですよ。でも正真正銘現在進行形の5股。思いっきり5股。5股て!!そんな話を届ける伊坂さんって!!と思いました。
でもそこは伊坂さんでありさすが伊坂さんと言っていいのでしょうか、繭美という強烈なキャラクターを配置することで毒をもって毒を制す的な?そんな感じで読めてしまいました。これは伊坂作品史上最強に強烈なキャラクターかも。
5股男・星野っちは一体何がどうなってバスに乗らねばならないのか、繭美は一体何者なのか、そういう物語における“現実部分”はあえて描かず、星野っちの人柄故か女性たちとの別れも液体飛び散る修羅場なんてことにはならず、淡々と、粛々と別れが積み重なっていくのですが、各話で撒かれた種が最後に花開く・・・・・・かも?という余韻を残す終わり方で、恐らくみんな星野っちのために動いてくれるのではないか・・・?と思うわけで、男女の別れというこの世で最も生々しい出来事の一つを扱っておきながらも全編通して現実味がない中でそれがいちばん不可解。だって5股男なのに!!(←しつこい)。