朝井 リョウ『桐島、部活やめるってよ』

桐島、部活やめるってよ

桐島、部活やめるってよ

このタイトルって最初から(応募作品から)変わってないのかなぁ?。だとしたらわたしはこの作品にこのタイトルを付けたというその一点だけでこの作者を評価します。
内容自体はなんてことない話。高校生が普通に部活や恋や将来や、家族や仲間についてウダウダと考えるってだけの話なんだけど、それぞれの視点で語られる物語の象徴というか・・・「高校生活」という楽しくも息苦しい時間の象徴としての「桐島」という男子校生の使い方が素晴らしいと思いました。桐島のことを外見も内面もものすっごい想像した。
あと特筆すべき点としては、さすが平成生まれ(・・・・・・)だけあって『現在(と書いて「いま」と読む』の高校生の心理描写はとてもリアルに思えるのですが、そのリアルさを読者に伝えるための文章力がしっかりしてるなーという印象でした。私結構なんとか賞受賞作を手にとるのですが、やっぱり文章力で引っかかるというか、読み難いなーって思うことが多いんですよね。でもこの本は新人にありがちな過剰であったり自己陶酔であったり、そういう“うっとおしい描写”がさほどなかったのがよかったと思う。
あと章タイトルが個人名で、その人物の視点でそれぞれの「高校生活(部活動)」が描かれるのですが、その基本舞台となるのは“高校三年のあるクラス”なのね。数人の視点から描かれる物語の中にクラスメイトたちがガッツリだったりほんのちょっとだったり登場してて、結果的にとても多くの人間が描かれる群像劇になってるのも上手いなと思った。その視点となる人物が所謂「上」と「真ん中」と「下」それぞれに属するってのも。他者と自分を比較しランク付けして自分の居場所を定め、そして同じランクの人間とツルむ・・・ってのはこの年代を描いた作品ではよく取り上げられるテーマであり設定だと思うのですが、そこに何らかの思いを加えるのではなくそれが“当たり前”のこととして描かれているってのはまさにリアル世代だからなんだろうなぁ。
ところでこの作者は早稲田在学中でストリートダンスサークル部に所属し名のある新人文学賞受賞と、これぞ『リア充』だと思うのですが、作者自身は高校時代どのランクに属してたんだろう?。なんとなーく大学デビューな気がしなくもない(笑)。


読みながら、5.6年前になるのかなぁ?高校の同級生に偶然会い、何故だか同窓会の話になって「お前らが言い出さなかったらやれるわけないじゃん」と言われたことを思い出しました。当時私はこの物語の言葉を借りるならば「上」のグループに所属し、今にして思えばそれはそれは好き勝手振舞っていたわけですよ。行事に伴う決め事なんかはよくも悪くも意見を通してたわけで、確かにその流れでいくならば私達のグループの誰かが同窓会を企画するべき立場なのだと思う。でも私(達)は全くそういうことを考えなくて、それどころか誰かがやってくれるのだと思ってた。というより私達がそういう立場であるという自覚が全くなかったんだよね。そのことを同級生に言われて初めて気が付いたんだよな。無自覚ってのは一番タチわるいよな・・・と思ったことを思い出しました。