西澤 保彦『身代わり』

身代わり

身代わり

久々の匠千暁シリーズです。あたらしい4人の物語を手にした時点では嬉しさのあまり泣きそうだったのですが、読み始めたらタックとタカチだけでなくウサコもボアン先輩もボロボロなもんだから別の意味で泣きそうになってしまいました。そして直接の前作にあたる依存がもう十年ぐらい前の刊行になると知り、これまた違う意味で涙目です・・・。読みながらやたらと切ない気持ちになってしまったのですが、その理由は内容もさることながら失った時間の大きさを改めて感じたというか、朝から酒飲んでいろんな話を出来る友達も機会ももはやそうそうないんだよなぁ・・・なんて思ったりして、だからこそ一層ボアン先輩たちにはいつまでも変わらずにいて欲しいのに・・・と過剰に思い入れをしてしまうからなのです。ボアン先輩には絶対に幸せになってもらいたい。
完全なるシリーズ物なのでそういう意味では敷居が高いとは思いますが、純粋にトリックだけ取り上げてもさすが西澤さん!と言う感じでした。ついついSF的なものを想像してしまうので特に片方の事件は全く予想がつかなかったし、二つの事件が一つに結びつく様はまさに鮮やか!の一言。同性愛要素の織り込み具合も物語の邪魔をしない程度で絶妙です。
待たされた甲斐あって満足ですが、次回作はこれほど待たされないといいな・・・。