- 作者: 百田尚樹
- 出版社/メーカー: 太田出版
- 発売日: 2008/06/19
- メディア: 単行本
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で、先入観を取っ払って読んだとしたら、きっととても面白く読めたのだと思う。かなりの文字数を使ってボクシングという競技の説明や試合描写が為されているので、ボクシングというスポーツに全く興味がない人はきっと退屈してしまうと思うのですが(そもそもそういう人は最初からこの本を手にすることはないか)、幸いといっていいのでしょうか、私は格闘技全般が大好きなので単純にボクシング小説として楽しむことができました。アマチュアボクシングはプロと比べて言ってしまえば“地味”だし、作中で書かれているように安全性を保つためとても多くのルールがあるので試合自体にドラマ性を持たせるのは難しいのではないかと思っていたのですが、その点は予想外というか期待以上の面白さでした。むしろ試合描写が一番惹きつけられたといってもいいぐらい。
でも期待してたいわゆる“キャラ萌え”はできなかった。前述の通りそういうものを求めて読んだ私が悪いのですが。ボクシングとは孤独な競技だということをふまえた上で、ボクシング部の仲間やライバルとの関係をもうちょっと掘り下げてくれたらグッと女子目線として“熱さ”を感じられただろうなぁと思うと残念というか、もったいないなーと思う。女ってのは男の友情が大好きなんだもの。確かに主人公の一人である秀才・優紀と正反対の性格をしてる(ボクシングの)天才・鏑矢の友情には滾りました。いわゆるウサギとカメ的な話に留まらず、二転三転する二人の関係性はとても読み応えがありました。そこに『努力』ということがいかに大切かというメッセージも織り込まれてるし、これは良かったと思う。でもそれだけじゃ足りないのです。せめて超高校級と言われているライバルの背景や心情をセリフとして語る形でも構わないので描いてくれたらもっといろんな妄想ができたのになーと思いました。なんでもかんでも妄想したがる自分の癖が恨めしい。次は先入観ナシで読みたいと思います!。