伊坂 幸太郎『逆ソクラテス』

逆ソクラテス

逆ソクラテス


先入観とか価値観とか、自分のなかにあるそういったものを変えることはとても難しいし、他人のそれを「私はそうは思わない」と否定することもまたとても難しいことだよなぁ。先入観と価値観じゃまた話が違うけど、いずれにしても大人になればなるほど難しい。
だから伊坂さんはこの(連作ではないのかな?)短編集の主人公を「子供」にしたのだろうと思って読んでいたのですが、ドカンと感情移入というか、感情決壊というか、「うわああああ!おまえか!これあのときのアイツか!!よかったなあ!やり直しできたんだなあ!頑張ったんだな、頑張れよ!」となったのはとある「大人キャラ」に対してでした。これは泣いちゃう。泣いちゃうよなって思いながらちょっとウルった。

私が大好きなミュージカルに「自分が変われば世界が変わる」ことを描いた作品があるのですが、この作品もつまりはそういうことなのだろう。「変わる」ことはなんだっていい。自分から変えるのでも、誰かの関与で変わるのでも、そこはどっちだっていい。一発大逆転が出来るとまでは私には思えないけれど、それでもとにかく一歩踏み出すことできっと何かが変わるのだろう。