勇嶺 薫『赤い夢の迷宮』

赤い夢の迷宮 (講談社ノベルス)

赤い夢の迷宮 (講談社ノベルス)

ぼくらが小学生だった頃。大人なのに大人じゃない不思議な男・OGに惹かれ、OGの家に出入りしてたぼくらは、夏休みのある日、それぞれが持ち寄った宝物を隠すために出かけたOGが所有する「お化け屋敷」で恐ろしいものを目撃した。それが原因でOGから距離をおくようになり、やがて大人になった。それから25年経った現在。ぼくらのもとへ突然OGから招待状が届き、再びあの「お化け屋敷」に集うことになった。同窓会気分で参加したぼくらだったが、そこで待ち構えていたのは悪夢のような殺人事件だった。


はやみねかおる名義で児童向け推理小説を書いてる著者ですが、今回は “大人向け”ミステリーということで、ひらがなではなく漢字のペンネームでの出版だそうです。虹北商店街シリーズ(私は虹北恭助シリーズと呼んでますが)しか読んだことがないので、この人が書く児童向け推理小説というのがどういうタイプ(キャラものとか冒険ものとか)なのか存じませんが、これが大人向け・・・・・・というほどでもないかなぁという印象。どういう言い方すればいいのか悩むところですが、語り口調が子供っぽいという気がするし、それぞれ大人ならではの事情を抱えてはいるものの、それが設定でしかないというか、それぞれの背中に25年の時間が背負われてない気がした。子供時代の関係性は大人になってもそのまんまだってのは分かるけど。
なんて言いながら、お化け屋敷のトリックは前菜のようなもんだろうから分かって当然なんだけど、肝の部分、エンディングをどう解釈すればいいのか分からないんだよなぁ・・・。
語り手である「ぼく」の名前がないのがポイントだよな。OG=ぼくか、ぼく=OGなのかどっちかかな?と思ったんだけど、とするとエンディングの天井から吊り下がってる男の子の記述(記憶)はどう考えたらいいんだろう?。もしかしてこの男の子がぼくなのかな?とも思ったんだけど、となるとゴッチやココアの家族とあったぼくは何なんだ?ってことになるしなぁ。ヤバイ全然わかんない・・・。それ以外にも、先天的な殺人者であるウガッコが結婚しようと思ったってのもなんか違和感を感じるし、類は友を呼ぶというか感応みたいなものかもしれないけど、殺人鬼の素質を持った人間が登場人物の3分の1ってのはちょっと無茶な気がする。ココアや吉良の死に方も強引だし、Cちゃんのような女はあの程度じゃ自殺なんてしないって。納得できたのはゴッチと魔女の死にっぷりぐらいで、なんかいろいろと納得できない・・・というかモヤモヤした気持ちが残る。ここらへんが大人向けということなのだろうか。ていうか私だんだん推理小説読むの下手になってきてるな・・・。
事件を解く鍵に子供の観察眼を使うところに魂を感じました。この人は児童向け推理小説作家であることに誇りを持ってるんだろうな。素晴らしいことだと思います。