真梨 幸子『女ともだち』

女ともだち

女ともだち

東京から電車で40分の三ツ原駅に立つ20階建ての高層マンション「リトルタワー」で2体の死体が見つかった。どちらも独身女性で、最初に見つかった死体は子宮を切り取られ、次に見つかった死体のそばには子宮を切り取った際に使用したと思われるナイフが落ちていた。時間を置かず犯人と目される男が逮捕されるが、しがないフリーライターの楢本野江はその男は犯人ではないと睨み、この事件のルポで名を上げようと取材に奔走する。取材過程で明らかになる被害者の背景。果たして事件の真相は?そして行き着いた先にあるものは・・・。


都心ではない場所に立つ高層マンションで起こった殺人事件をルポライターの取材、つまり関係者や被害者を知る者達の証言を元に描く手法と聞くと、宮部みゆきの「理由」を思い浮かべてしまいますが、この作品にそれほどの謎はありません。あるのはひたすら女ならではの“負の感情”。ルポライターと担当編集者は女であり、被害者は若いとはいえない二人の女。加害者とされる男のことはほとんど描かれず、被害者の女を知る人物、これまた女達が「ここだけの話ですけど」「今だから言いますけど」「本当はこんなことは言いたくないんですけど」なんて言いながら、被害者のことを好き勝手に証言する。読みながら先日読んだ貫井徳郎の「愚行録」を思い出しましたが、内容(ストーリー展開)はともかくとして、女の黒さの描写は断然こちらの方が上。是非ともこの人にはこの路線を突き詰めてもらいたいです。