樋口 有介『月への梯子』

月への梯子

月への梯子

ボクさんは40歳独身、両親を亡くし1人でアパートの大家をして暮らしている。少し頭の回転が良くないけれど、アパートの住人や近所の人は皆良い人ばかりで、幸せな日々を送っている。そんなある日、アパートの住人が殺された。ペンキ塗りをしようと梯子に登ったボクさんは、窓からその死体を目撃してしまい、ショックで落下。病院で目覚めたボクさんは、事件後アパートの住人が全員失踪したという事実を聞かされる。そしてボクさんの身体にも変化が。善意に囲まれて生きていると思っていたのは間違いだったのだろうか。真実を知ることは幸せの終わりを告げることになるのだろうか。


ボクさんに起こった変化やアパート住人達の素性など、こんなこと絶対にないとは言わないけれど、でもやっぱりありえねー!なのですが、ボクさんが素敵なので許せる。許した上で笑えたりホッコリできたり、犯人の予想をしたりしつつ、これどこに着地するのかなぁと思いながら読んでいたら・・・・・・え!?ちょ、待ってどういうこと!?そんなぁぁぁぁぁと叫びました、心の中で。樋口有介の物語は私にとっては癒しアイテムなので、端からリアリティを求めたりはしませんが、このオチはどうなのよー!?いやーものすっごいおとぎ話。見たとか聞いたとかそれだけならばそういうこともある・・・かもしれないけれど、実際に物質まであるとなるとなぁ。

私はどちらかというと「知る」ことにそれほど欲がないと思う。例えば、恋人の浮気という行為そのものはどうだっていいんだけど、浮気の事実を知りたいか知りたくないかと聞かれたら、絶対に知りたくないと答える。私がその事実を知ることがなければ浮気は存在しないと同じだから。例えは上手くないけれど、基本的にそういう考えなので、先に待つのは痛みや哀しみだと分かっていても尚、知ることを求める気持ちは分からない。ボクさんの場合はそんな単純な話じゃないんだけど。知ることから逃げるラクさは、大人にならなきゃ分からないから。

表紙の写真がとても良くて、物語に合ってるなぁ・・・と思ったらまたもや佐内正史でした。