道尾 秀介『背の眼』

背の眼

背の眼

第5回ホラーサスペンス大賞特別賞受賞作。
ホラー作家の道尾は、たまたま訪ねた旅先の白峠村で不気味な声を耳にする。怯えた道尾は「霊現象探求所」を営む友人の真備に相談するが、真備に見せられたものは、被写体の背中に二つの眼が見える4枚の心霊写真だった。被写体同士に共通点のない写真は、すべて白峠付近で撮影され、全員が自殺しているという。道尾は真備とその助手北見とともに、再び白峠に向かい、背の眼、そして未解決の連続児童失踪事件の謎を探る。


ホラサス大賞なのに、普通に本格です。背中に現れる二つの眼とか、幽霊とか天狗伝説なんていうエッセンスから土着ホラー(と勝手に読んでますが、村に伝わる秘伝や信仰が核になる物語、狗神とかそういうやつ)な物語を想像してたのですが、いくつかの謎があり、伏線があり、最後にそれなりに納得のいく理論でもって謎が解明されるという「本格ミステリ、ホラー風」でした。
で、まず思ったこと。
「また京極かよ!」
著者紹介を確認したら1975年生まれだそうで、やっぱり京極夏彦は偉大というか、作家を目指す若い人たちオピニオンリーダーなんだなぁと。
選評で綾辻氏が

これをエピゴーネンであると否定するよりも、若い作家による熱烈なオマージュとして受け止めるべきだろうと考える。

と書いてますが、私もそう思う(エピゴーネンって何?と思って調べたけど)。リスペクトの気持ちは伝わります。


以下ネタバレ↓
まさかこの人(この登場人物がエノさんから変人率を7割引にした感じ)、憑き物落としとかできちゃわないよな・・・と思ったら、やっちゃったよオイ!!みたいなびっくりシーンがあったりしましたが、一応それなりの結末にはなってました。
↑ここまで。



各選者が「冗長」「なくてもよいエピソードを刈り込む勇気も必要」などと書いていて、可能な限り余計な部分を削る努力をすることを条件に授賞が決まったとのことですが、こ、これでも削ったんかー!?と驚いた。こんなとこまで京極リスペクトしなくても・・・。
若いっつっても30歳なんで、いつまでも他の作家の影響力受けまくりな作品を書くわけにもいかんだろうと冷たい言い方をしてみる。同年代には厳しいのだ。「本格ミステリ」を書く同年代の作家っていないよなぁと寂しく思っていたので、今後は是非ともオリジナリティのある本格を書いて欲しいなぁと期待します。
とキーを打った瞬間思った。これって、たまたま本格になっちゃったわけじゃないよな・・・。うーんちょっと不安。