大山 誠一郎『アルファベット・パズラーズ』

井の頭公園の近くにある「AHM」というマンションの最上階。そこで暮らすオーナーの部屋に、警視庁捜査一課の刑事、翻訳家、精神科医が集い、紅茶を楽しみながら刑事が扱った事件の真相を解明すべく推理を競う。


毒殺の妄想にとらわれた女性を巡る殺人事件、指紋照合システムに守られ出入りの記録が全て取られる部屋に残された死体、12年前に起こり未だ未解決の誘拐爆破殺人事件。3つの事件を扱ったタイトルの頭にはそれぞれP、F、Yのアルファベットが付いています。集まったメンツに全く統一性がありませんが、みんな「AHM」に住んでるという設定です。とても暇そうに見えるというか、のどかな空気が漂ってるように思うのは気のせいか?現行の事件ですよ!皆さん。刑事が事件のことを部外者(一部関係者の場合あり)にペラペラしゃべりすぎです。思わせぶりな職業を与えておきながら、それほど意味がなかったりと登場人物は記号に近いですが、謎と着地点は面白いと思った。古きよき本格って感じ。
途中の推理合戦というか、あーでもないこーでもないの言い合いはこじつけた感じがしなくもないですが、犯行そのものはよく考えてひねってあるのに、動機はあまりにもありきたりというところもトリック命で、それさえよけりゃ人間なんて書かなくてもいいんだ!ぐらいの意気込みを感じました。更に本全体にも仕掛け(というほどでもないかな)があったりして、忘れかけてたトキメキを思い出しそうになりました(思い出すまではいかないの。微妙)。
1500円はちょっと高いけど、高級なノベルス(どんなだ!?)だと思えばいっかなぁ。
著者紹介を見て、この人も京大推理研の人かよーと思った。特に深い意味はないんですけど。