永瀬 隼介『Dojo - 道場』

Dojo - 道場

Dojo - 道場

中堅広告代理店をリストラされた28歳の藤堂(元空手家)は、敬愛する先輩から頼まれ少しの間だけということで空手道場を任された。ほんの1.2週間のつもりだったのに、なぜか先輩は失踪。必死で道場を守ろうとする藤堂の元を訪れる奇妙な人々、そして奇妙な出来事に体当たりで挑む体育会系短編集。


非常にユルい。なんだか地についてない感じ。格闘シーン以外は朧気といった感じで、登場人物、特に主人公の設定があいまいで、どういう人物像なのか最後まではっきりしなかった。
元々犯罪物ノンフィクションのライターさんで、小説を書くようになってからも始めの何作かはかなりそっち方面、硬派なタイプの作品を書いていたと認識している。すごく硬質な文章で、冬の空き地に吹く冷たい風のような空気を纏っていると思った。私はそこが好きだった。このところ、エンターテイメント色の強い作品を続けてだしているけれど、はっきりいって似合わないと思う。アホっぽい言い方をしてしまえば「ノリ悪くない?」って感じなんだよな。重苦しい題材で、しかも硬い文体なんて本は商業的によろしくないのかもしれない。軽めでしかも短編集みたいな方が求められてるのかもしれない。でも、向き不向きってあると思うんだけどな。なーんとなくぎこちないんだよなぁ、このパターンだと。
多分、今格闘技に夢中なのではないかと予想。一つ前に読んだ「ポリスマン」といいこの作品といい、妙に格闘部分だけ温度が違う。元ノンフィクションライター本領発揮!って感じで臨場感あると思う。そこは面白いと思うんだけど・・・。