香納 諒一『あの夏、風の街に消えた』

あの夏、風の街に消えた

あの夏、風の街に消えた

くっそ〜〜〜〜また売れ線狙ってやがる!タイトルに句読点とか入れんなやー!
僕の人生が始まった夏。それはまだ二十世紀のことだった・・・。夏休みが始まった朝、京都。失恋の痛手と猛烈な宿酔いで苦しむ僕の元へ見たこともない男が現れた。厄介な父親が事件に関わったせいで僕の身もちょっとばかり危ないらしい。僕を東京へ連れてくるよう頼まれたという。訳も分からないまま連れて行かれた街は、新宿だった。やがて取り壊されるホテルに滞在しながら僕はその夏、世界の広さと面白さ、そして人生の希望を知った。
ヤッバイ、ちょっと面白かった。ノスタルジックな切なさとサスペンス(帯より)だそうですが、サスペンス部分がすごいの。だって、隅田川で二人分のバラバラ死体が発見されるんですよ!しかも切断面には刃物で切ったような跡もなくて、何か普通じゃ想像つかないような切断方法で殺されたらしいのですよ。超ミステリ!超猟奇殺人!で実際はペットの鰐が巨大化して食った ってことなんだけど。わはははは、そりゃねーよー。しかもその鰐をホームレスの集団が捕まえて食った。敵討ち。というオチあり。それは本筋にはそれほど関係ない・・・のかな?とにかくものすっごいネタなのにさらっと書いてるとこが凄いと思った。その手の物語ではないので、突っ込まない突っ込まない。
将来の目的というか明確な未来を描いたことのない19歳の青年(大人と子供の境目)が新宿という「異世界」に自分の意思とは関係なく連れてこられ、出会ったことのないタイプの人たちとひと夏の冒険をし、そして大人になった。これはまぁありがちなパターンなんだけど、主人公の周りの人間が小説内人物として非常に魅力的だったので、とても面白かったし、共感もできた。回想録のような書き方なので、思い出の夏が終わりその後は・・・という事後譚?そんな言葉ないかな、エピローグのようなものがあるのですが、それがちょっと悲しい。ええー!そんなぁ!みたいな。いろんな試練を乗り越えて人は成長するということかな。お好みなラストでした。期待以上に面白かったです。