神山 裕右『カタコンベ』

カタコンベ

カタコンベ

乱歩賞最年少受賞ということで話題の作品。自らの失敗で事故を起こしてしまった過去を引きずるケイブダイバーが、崖崩れに巻き込まれ洞窟に閉じ込められた学術調査隊を単身助けに行く。しかも降りだした豪雨で洞窟は完全に水没してしまうという。救出のタイムリミットは5時間。設定がほとんど真保。これにプラスして一応ミステリ要素もあるにはあるんだけど、「殺意を持つ謎の人物」の選択肢が少なすぎだし、動機や謎の解明もアッサリすぎ。ミステリとしての面白みはゼロですよ。崖崩れ=自然災害をあらかじめ予定に組み込んでいたような計画性はどうなのよ?と思った。じゃあ、アクション小説として読めばいいかと思うと、タイムリミットがあるっていうのに倒れた人間がいるとはいえのん気に休んだりしてるし、死を前にしてるという緊迫感ゼロ。登場人物もパターン通りで感情移入どころか、思い描くこともできない。さんざん人跡未踏と煽っといてそれはないんじゃない?と思った。表現や視点に引っかかる箇所が結構あって、テンポが取りずらいなーと思い続けながら読んだ。乱歩賞作品なので巻末に総評があるのですが、ほぼ全員がそれを指摘してます。ちょっと珍しいほど苦言を含む受賞作品の評価で、それなら賞を与えなきゃいいんじゃないの?このところの若い作家ブームに乗って話題づくりしようとしたんだろ、なんて思ってしまった。若いということと、ケイビング(洞窟探検)という馴染みのない題材がちょっとめずらしいなーぐらいしか残らないと思う。