重松 清『送り火』

送り火

送り火

架空の私鉄を軸として、沿線に住む人々の心を描いた9編からなる短編集。そこに住む人の数だけいろいろな想いがある。とても素敵な本です。「不気味なのにあたたかな、アーバン・ホラー」とありますが、確かにホラー的な要素も結構あるんだけど、それはあくまでもスパイス。超常現象のようなものだったり、幽霊のようなものだったり、それから狂気のようなものだったり物語はホラー調ではあるけれど、そこは重松清。悩みがあったり気にかかることがあったり、ちょっと生きることに疲れてしまったりしてるけど、それでもやっぱり生きていこう、あんまり頑張らずに。そんな人たちがそこにはいるのです。そしてそれはいつでも自分に置き換えられる。立場やシチュエーションが違っても、根っこの部分で感じてしまうから。実際、特別悩んでることがあるわけじゃないはずなんだけど、それでもなぜか少しだけ上を見上げてみようかと思ったりしてしまう。重松マジック。なんだ?あたし疲れてるの?と問いかけてみたりして。都会で生きる現代人は大変なのです。それでも多分ひとりじゃない。