綾辻 行人『暗黒館の殺人 上下』

暗黒館の殺人 (上) (講談社ノベルス)

暗黒館の殺人 (上) (講談社ノベルス)

暗黒館の殺人 (下) (講談社ノベルス)

暗黒館の殺人 (下) (講談社ノベルス)

やっと読み終わりました。結構速読派だと思うんだけど、ほぼ1週間かかった。キツかったですよもう。特別思い入れのあるシリーズだし、騙されないぞーとメモ取りながら読んだせいもあると思うけど、それにしてもここまで枚数かけることなくない?
以下ネタバレ含みます


雰囲気はゴシック調、館に住む人たちもシャム双生児だのせむし男だの早老症の少年だの不謹慎な言い方だけど、ビックリ人間大集合!で今更こんなのでいいの?・・・と思ってしまった。そのせいで、特に上巻はググーッと入りこめなかった。館そのものも青司の館にしては、日の光が入らない黒い建物だというだけで、それほど魅力を感じなかったし・・・(と思ったらそういうことだったのねとラストでニヤリ)。謎の視点の存在と中也の記憶が囁きシリーズとか最後の記憶とかあと殺人鬼Ⅱだとかで使われていた、肝心のとこをぼかす書き方で、あーこれはもう持ちネタなんだなぁなんて思った。江南を「えなみ」と読ませたまま物語は進むから、江南とえなみは同一ではないのだろう=現代の物語ではないのだろうと気付くものの、過去の物語の上にさらに過去の物語があって、それを登場人物が口頭で話すもんだから頭のメモも限界で、もーそんな昔のことなんかどーでもいいよ、江南くんはどーなってんだよ?と思ってしまった時点で、多分負けた。江南とえなみという呼び方にひっかかったし、前例もあることだし、まさか名前そのものに謎が?なんて思って人物表を再チェックすると浦登(ウラド)て・・・まさかヴラド・ツェペシュ?そいえば、日光を嫌ってるし黒い服着てるし・・・ちょっとイヤな予感がよぎる。うわーやっぱりお耽美でちゃったよ。だって中原中也だもんなぁ・・・受けっぽい外見だもんなぁ。僕の血を君にもなんてまるでインタビュー・ウィズ・ヴァンパイア。注射器でってとこが無粋だったけど。過去の館シリーズと比較してしまうと、殺人が地味だなー。首チョンパとかないと物足りなさすぎて、舞台装置が仰々しいだけに余計に普通だと思えてしまう。くっついてた双子がちぎれたのにはびっくりしたけど。あそこが一番ビックリだった。とてつもなく古ぼっくさい物語の中で、この双子が人の目があるところでだけ、シャム双子のふりをしてたというくだりと、連続殺人の動機というか、死を求めている人に死を与えることが使命だと思ったということが、妙に現代を反映してると思った。さすがに8年は長かったってことかな。
で、結局全てにおいていくらなんでも偶然で片付けすぎなんじゃないかと思った。せめて、何故江南が視点として過去に飛んでしまうようなことが起こったのか?ぐらいは理由づけして欲しかった。だって夢オチですよ?いくらそういうことが起こりうる場所なんだって言われてもさぁ。なんか不完全燃焼な気分。浦登家の優秀な主治医の正体が明かされなかったせいで、かなり含みのあるラストではあるし、これで終わるのかと思いきやまだ館シリーズは続くらしいので、ダリアの祝福を受けた青司の生死も含めて、お楽しみはまだ続く・・・んだろうな。もう今後は登場しないかもしれないけど、江南くんがオカルト方面に行っちゃわないことを祈ります。