櫛木 理宇『少年籠城』

温泉街の河原で子供の惨殺死体が発見される。捜査開始早々に容疑者として15歳の少年の名前があがるが、交番の警官が職務質問すると少年は所持していたナイフで警官を刺し拳銃を奪って食堂に立てこもる。その食堂は子供食堂であり、店内にいた子供たちと店主を人質とした少年は「自分は無実であり、真犯人を探して謝罪しろ」と要求する。

登場人物の大半が様々な事情で社会保障を受けられず学校にさえ通えない子供たちなもんで、問題の質は全く違えど「少子化」ということばが読書中ずっと頭に真ん中にありました。
そしてそのことばに対して目を背けることしかできないのが私という人間であることを改めて自覚する読書時間でありました。

「動画配信」という要素はあるものの視点としては子供たちと共に人質となるこども食堂の店主と、その訳あり幼馴染である刑事に絞り、この手の劇場型犯罪にありがちなネットの声といった一般人の“悪意”は描かれず、社会的弱者(どころか社会的には存在を認識されていない)の子供たちに焦点がしっかり合っているシンプルな作品で、内容は悲惨で残酷ではありますが読みやすかったです。