行成 薫『怪盗インビジブル』

怪盗インビジブル

怪盗インビジブル

はじめての作家さんです。

学校に伝わる七不思議のなかに「生徒の一番大事なものを盗み、ネコが描かれた黄色の付箋紙を残していくという『怪盗インビジブル』」なるものがあるとある地方の公立中学が舞台で、『悩みを抱えた生徒たちが、盗まれたことで見つけたものは――?』と帯にある通り、将来や対人関係で悩む中学生たちの答え探し的な話だろうと事前に予想したまんまの話・・・・・・が3編目まで続くのですが、4編目でその様相が一気に変わった。
単なる“噂(七不思議)”であるはずの怪盗インビジブルが「今」現れた理由はとても個人的なもので、それがわかってみるとそれまでの「答え探し」に影が差すというか、それぞれの前向きな結末の背後にこんな悪意が潜んでいたのかとうすら寒くなるし、またその反面誰かの悪意によって行われたことが誰かにとっては状況が好転するという皮肉な結果になったとも言えるわけで、この構成は面白い。
そしてそれに怪盗インビジブル誕生話が続く。こんな理由・目的によって生まれた「怪盗インビジブル」が時を経てこんなふうに姿を変えてしまうのか・・・と思いきや、やっぱり根幹のところは変わらないのだろうと、この着地点もよかった。