『ジャージー・ボーイズ』@シアタークリエ

この舞台を観たひとはひとり残らずこう思ったでしょうが、わたしも言わせて叫ばせて!!



日本に中川晃教がいてよかった!!!



もうこれ。これしかない。

劇中で歌われる曲の8割は知ってる曲で、なんなら(適当英語で)口ずさめるぐらいで、「フォーシーズンズ」というアメリカのポップスグループ(ロックではなくポップスという認識でした)の名前も聞いたことがある。
でもその両者はわたしの中で結びついてはいませんでした。その程度の知識しかもたないわたしではありますが、そんなわたしですら「中川晃教フランキー・ヴァリ」の歌声には震えたし、アッキーがいなかったらこの素敵にゴキゲンな作品が上演されることがなかったと思うと、その場でひれ伏したくなりました。

フォーシーズンズというバンドが生まれ、アメリカのヒットチャートを駆けのぼり、人気絶頂となった頃メンバーのひとりが抱える問題が発覚しバンドはバラバラに、それぞれ別の人生を歩くことになったがそれから数十年がたちフォーシーズンズがロックの殿堂入りすることになりそのセレモニーで再会・・・という物語なんだけど、前述の通りの知識レベルなんでフォーシーズンズの歴史(話)そのものにはそこまで興味ないわけですよ。なかったわけですよ。でもすっごく楽しめた。

トニー賞を受賞した作品に対しこんなことを言うとか分かってない!!と怒られるでしょうが、正直言って「ミュージカル」としてはどうなんだろう?と思うところはあるんです。ミュージカルをさほど観ない(あんまり好まない)お前が偉そうに言うなと言われたらその通りですごめんなさいと謝りますが、ミュージカルを知らないわたしからすると、フォーシーズンズの物語の中にフォーシーズンズのヒット曲を織り込む・・・という表現でいいのかなぁ?ミュージカル用に作った曲ではなく『曲』単体で成立していたものを物語と融合させたのがこの作品(だと思う)なので、舞台としての展開と曲が必ずしもマッチしてるとは言えないと思ったから。曲が出来た(リリースされた)流れは現実に沿ってるものなのでしょうからマッチしてるもなにもないってか、フォーシーズンズの歴史を知ってるひとならばここでこの歌を唄って当然であり「まってました!!」ってなもんでしょうが、繰り返すけどわたしは知らないからさ、メンバーの『感情』と『曲』との間にちょっとした隙間のようなものを感じた瞬間があったんです。

だけどアッキーが歌うとその隙間が埋まる。トミーに音楽の才能を見出され、ニックによってその才能を引き上げられ、ボブという協力なパートナーを得て才能を開花させたフランキー。アッキーの歌声が物語と曲を繋ぎ流れとなって、フォーシーズンズの物語が「わたしが今見ている4人の物語」になるんです。最初はほとんど知らなかったトミーとニックとボブとフランキーのことが観終わるときには大好きになってる。それは『絶対的なフランキー・ヴァリの歌声』があるから。この歌声のためにボブは全才能を注ぎこみ、トミーは借金し、ニックは我慢ができたんだろうし、仲違いしてもまた笑いあえるのは変わらないフランキーの歌声があるからなんだろうなって、受け止められちゃう。4人が歌ってくれるだけで楽しくて幸せな気持ちになってしまうのです。
千秋楽のカーテンコールで大音くんがアッキーを「神」として崇めまくってたけど(超テンパってて可愛かったw)、ほんと神。天使の歌声を持つ神様です。ものすごい気さくな神様だけど(笑)。


ブロードウェイ版とは演出が違うそうで今回の公演は完全なる「日本版」とのことですが、舞台両脇にモニターが積み上げられそこに「季節」ごとの語り部を担うメンバーを中心として“撮影スタッフ”が撮ってる“映像”を見せるってのは日本版独自の演出なのかなぁ?。わたしはこれがとても藤田さんらしい(蜷川さんの存在を感じる)なと思ったんだけど、日本人がまず「ジャージー・ボーイズ」に触れるとしたら映画版ですよね。わたしも事前に予習のつもりで映画を見ましたが、この映画と同じような演出のおかげで即座に作品世界に気持ちを持っていくことができました。非常にわかりやすいというか、伝わりやすい演出だったと思う。

(ブロードウェイ版もそうかもしれませんが)フォーシーズンズの歴史を四季に乗せて描くっていうのも日本人に受け入れやすい。トミーが語るパートは『春』で、フランキーがバンドに加わりトミー主導でフォーシーズンズが芽吹き、そこにボブが加わり語り部となる『夏』にフォーシーズンズは大輪の花を開く。でもトミーの借金問題が発覚し、それまで一歩引いた存在だったニックがそれまでの不満を爆発させたことでバンドは花が散り葉を落とすがごとく空中分解。それが『秋』。そして愛する娘を亡くし枯れ木のようなフランキーが語る孤独な『冬』・・・といった感じで流れを感覚として理解しやすかったし、4人がそれぞれ語り部となることで(フランキー以外)個別にはそこまで深く描かれずとも人間性・人間味が伝わってくる。ゆえに愛情がわく。

わたしは今回Whiteチームしか観ることができなかったんでこの4人こそがフォーシーズンズですが、だいぶ印象が違ったというRedチームも観ていればまた違う人物像になるかもだし、違う視点が生まれたかもしれないし、あーやっぱり両方観たかったってか観るべきだったよなー。こうなることは覚悟したうえでの選択だったけどさー。

なので再演もぜひぜひRed・White全員揃っての2チーム編成でお願いいたしたく!!アッキーの負担を考えると心苦しいお願いではありますが、ぜひぜひぜひ!!!。