両角 長彦 『便利屋サルコリ』

便利屋サルコリ

便利屋サルコリ

それぞれの頭文字を取った「サルコリ」という便利屋をやってる男2女1のトリオがドタバタしながらも依頼を解決するってな連作(?)短編集なのですが、連作のうしろに「(?)」と付けた理由は幕間というか章間というか、作品と作品の合間に全体の流れとは関係ないと思われる短編が挟まれてるからです。文字数もページのデザインも異なるそれらも目次の上では表記上の違いはなく、これが何を意味しているのかが判らない。
ていうか、設定や世界観自体もよく分からず、探偵の専門学校を出て便利屋をやってるってのはまぁ実際やってることは大差なくとも掲げる看板が「探偵」と「便利屋」とじゃ美学とかポリシーとか、そういうものに違いがあると思うんでそこはいいとして、いきなり自衛隊が絡むわ一流企業のトップを誘拐しその前で抗議の切腹をしようとするわ学校を爆破しようとするわ、案件のスケールが「探偵の専門学校卒業後便利屋を始めた」トリオが扱うものとしては大きすぎないか?と。それに、リーダーは多少頭が切れる描写はあるものの他の2人は格闘の心得があるといってもそれを活かすこともなく、美人だといってもそれを活かすこともなく、つまりさしたる特殊技能があるわけでもないのになんでこんな依頼があるのかと。ついでに言えば実はカツラ乗せてるとか実は子持ちとか、個人の設定が展開に活かされることもないし(子持ちはまぁ人質として有効だったけど)。
でも案件自体は面白くはあるんだよなぁ。どれもタイプとしてはブラックコメディで、そのブラックさ(の方向性)は結構好みなんだけど、設定を活かさないから過程というか展開というか、結末に至るまでがつまらない。