河合 莞爾『デビル・イン・ヘブン』

デビル・イン・ヘブン

デビル・イン・ヘブン

初めての作家さんです。
東京オリンピック誘致とカジノ計画の裏に陰謀が・・・というありがちネタを横溝賞受賞者がどう料理するのか?と思い手に取ったわけですが、陰謀に関してはわりと早々に解明というか、主人公と共に行動する人物たちの間で推理という形で明らかになるものの、如何せん話が大きすぎていくら小説とはいえ個人レベルでどうこうできるわけないだろうにどうするのかと思ったら協力者が次々と殺されていき、そこへもう一人の主人公が現れ最終的には塔の上で銃バトル・・・とまるでハリウッド作品のごときエンターテイメント小説でした(ラストシーンはPSYCHO-PASSというアニメ作品を想起させられました)。
でも悪くない。予想(期待)していたものとはだいぶ路線が違うものの、これはこれで面白かった。現実を下敷きにしてるだけあって舞台となる「特区」やテーマである「ギャンブル依存」は想像しやすく、でもあくまでもそれはベース(土台)まででその上には小説らしい虚構が乗っかってる。序盤に複数の要素が描かれそれが徐々に一つに結び付くという構図も無理がなく、横道に逸れたり盛り上がる展開になりそうなところもサクサク進むし、登場人物が次々と殺されると前述したように全体の印象として潔いんですよね。だからそれなりに文字数はあるけどいい意味で読み流せる。
横溝賞受賞作とその続編にあたる作品も読んでみよう。