本多 孝好『ストレイヤーズ・クロニクル ACT-1』

ストレイヤーズ・クロニクル ACT?1

ストレイヤーズ・クロニクル ACT?1

これ“こういう作品”を書いて欲しいという依頼があって執筆されたものなのか、それとも本多さん自らこういうものを書こうと思われたのかどっちなんだろ?。
日本を(いずれ)動かす立場の人間によって生み出された・・・というよりも造りだされたと表現すべきなのかな、特殊能力保持者となった者たちによる異能バトルもので、装丁(表紙)を見れば一目瞭然ですが、これまでの本多作品とは全く違う、所謂「ラノベ」です。多分。多分というのは私がラノベというジャンルに対し明確な自分なりの線引きを持ちえていないから。で、ノベライズなどではないオリジナルの「ラノベ」を本多孝好が書いたというそのことに衝撃を受けました。本屋で手にとりこれは私が知っている本多孝好なのだろうかと暫し考え込んじゃったぐらい。
主人公たちのグループは施設で育った仲間であり擬似家族であり、それぞれ予知能力・運動能力・聴力・直感像記憶力を特化された超人たちで、新進気鋭の切れ者政治家に雇われ裏仕事を請け負っている。一方悪事を働く人間を次々と“処刑”する殺人集団が存在していて、それは主人公たちとは「別のロット」として作られたこれまた超人たちであると。・・・とまぁ設定自体はよくある感じなんですよ。それぞれのビジュアルも押絵を含め作中で明確に描写されていて、常に笑顔のイケメンとか灰色の瞳を持つ超美人とか金髪に緑の瞳の迷彩少年とか、もう“モロそっち系”なんですよね。
でもそこは本多孝好。やっぱり本多孝好。そんなキャラクター達に圧倒的なまでの切なさや哀しさが詰まってる。主人公のイケメン・昴が戦う理由は自分にとって唯一守るべき存在である弟や妹たちを「生かす」ことのみなんだけど、それだってさして珍しくない“設定”だと思うでしょうが、本多さんはそこに設定以上の“何か”を込めることが出来る人なのです。全何作構想なのかまだわからないもののその中で今作は“主な人物紹介”という位置づけにあたると思うわけですが、それでも各キャラたちが抱える“何か”の片鱗はしっかりと見えているのでそれが今後どう掘り下げられていくのか楽しみ!。
シリーズのメイン軸は主人公たちVS「アゲハ」になるのでしょうが、今作に登場した三人も今後必ず何らかの役目を担うのだろうし、とにかくもう早く次が読みたい!!!。