- 作者: 伊坂幸太郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2007/11/29
- メディア: ハードカバー
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「魔王」で描いたようなナショナリズムの話なのかと思いきや、それがなんだったのかは闇の中だが“巨大な権力”によって仕組まれた陰謀の主役に仕立て上げられたちょっとイケメン青年とそれを助ける愉快な仲間たちってな感じの物語でした。イケメンはかなり重要なキーワードです。相変わらず一見なんの繋がりもなさそうな事柄が終盤でぐんぐん回収されていく様はウットリしてしまう手際の良さなのですが、なんていうか、真っ直ぐすぎる。真っ当すぎるんだよな。これまでのどの物語よりも話の筋がシンプルって言ってもいいぐらいストレートな物語で、逃げるイケメンの物語だけに疾走感だったりクライマックスの公園のシーンなんて思わずIWGPを思い浮かべちゃったぐらいの爽快感だったんだけど、ひねくれた部分も欲しかったんだよな・・・。伊坂に対してはわがままいいたいわたし。
とかいいながら、「人を殺すことはあっても、痴漢はしない」という青柳父の
人を殺すのが正しいとは思わない。ただな、自分の身を守る時だとか、たとえば、家族を守る時だとか、そういった時に、相手を殺してしまう可能性がないとは言えないだろう?本音を言うとな、俺はそいうのはアリだと思ってんだ。(中略)ただ、痴漢ってのはどう理屈をこねても、許されないだろうが。痴漢せざるをえない状況ってのが、俺には思いつかないからな。まさか、子供を守るために、痴漢をしました、なんてことはねえだろ。
これ、ニヤニヤしながら妙に納得したんだけど、この父親の「痴漢嫌い」がラストシーン(の一歩手前)に繋がった瞬間、涙がボロボロボロってこぼれました。ちくしょー、伊坂憎いぜこのやろー!