吉来 駿作『キタイ』

キタイ

キタイ

中国に伝わる死者を甦らせる儀式「キタイ」。定められた場所に遺体を埋めるとやがて身体中に青い玉が生じ、その玉を飲んだものに死者が乗り移り甦るという。仲間内でカリスマ的な存在の葛西が死に、葛西を甦らせるために8人の高校生は「キタイ」を実行した。しかし葛西は甦らず、青い玉を飲んだ彼らはそれぞれ様々な現象に悩まされ、人生が大きく狂い始める。そして「キタイ」から18年。ついに葛西は当時の姿のまま復活を遂げた。


第6回ホラーサスペンス大賞受賞作。ジャンルとしてはホラーだと思うんだけど、青春群像小説としても読めるし、面白かった。巻末の選評で選考委員の綾辻氏も書いてますが、アメリカの“シャワー浴びてる人物とお調子者は絶対死ぬ”がお約束のホラー映画っぽい雰囲気で、グロ&スプラッターについでにちょっとエロもありと、いい意味でのB級感がありました。ちょっと偏執だけどわんこ愛もあるし。
半分ぐらいが男7人と女2人でつるんでた高校時代の回想なのですが、人物がちゃんと描き分けられていて、妖しい魅力を湛えた葛西と大人びた美少女洋子が特によかった。どっちもマイナスの色気というか、引っ掛ったらボロボロにされそうな感じ。「キタイ」なんてせずにそのまんま大人になってたらこの子らどういう関係になるんだろうって想像するとそれはそれでちょっと面白そう。
2作目が楽しみです。