貫井 徳郎『空白の叫び』

空白の叫び 上

空白の叫び 上

空白の叫び 下

空白の叫び 下

少年は何故、殺人を犯すのか。殺人者となった少年は、更生できるのか。家庭環境も性格も価値観もまったく異なる三人の少年。共通点は「人を殺した」という事実。


上巻と下巻でここまで話が違う小説も珍しいかも。貫井さんだけに、単なる少年の更生物語にはならないだろうと予想してましたが、まさかこんな展開になるとは(笑)。驚愕とかそういうのではなく(笑)←こんな感じ。いや、笑うような話じゃないんだけど、でも結構この展開は凄い。
葛城と神原の関係に纏わる真実はちょっと驚きました。ここに貫井さんの魂を感じました。殺人という行為を行ったのは何年も前のことで、少年というよりももう青年?と何度も錯覚しそうになったほど老成というか少年らしさがないというか、そんな三人なのですが、この子ら15歳なんだよな。しかも人殺したのってたった1年前の話なんだよな。更正ってなんだろう、何をもって「あいつは更正した、更正しようと頑張ってる」て言えるんだろう、と思う。殺人に至る心情は丁寧にたっぷりと描かれていて、その稚拙さにうんざりし、怖くなる。でも殺人という行為そのものはアッサリとしか描かれない。それがまた殺人という行為の簡単さを表しているようで、怖い。