藤岡 真『ギブソン』

ギブソン (ミステリ・フロンティア)

ギブソン (ミステリ・フロンティア)

接待ゴルフのためいつものように上司を迎えに行くと、そこに敬愛する高城の姿はなく、彼はそのまま失踪してしまった。納得がいかない日下部は、高城を慕い職種転換した笹崎とともに行方を追うことに。彼らの前に次々と現れる謎。失踪する人々。パズルのピースが集まり始めても、杳として知れない高城の行方、そして失踪の理由。そしてたどり着いた先には、驚愕の真実が待っていた。
「六色金神殺人事件」の著者による新作です。「六色〜」はなんというか、(笑)←いい意味でこれ一言な横溝リスペクト作品でしたが、今作はザ・ハードボイルド。そしてまた漂う空気が(笑)←こんな感じ。
題名の「ギブソン」とはカクテルの名前だそうで、本筋にはそれほど関係ありませんが、ことあるごとに主人公が飲んでます。ハードボイルド=酒だからね。主人公は探偵ではなく広告代理店の営業マンですが、部下に仕事をさせて自分はひたすら上司の行方を追います。フットワークめちゃ軽。読書中、「あなたは仕事をしなくていいのですか?」と社会の歯車(しかも末端)は何度も尋ねたくなりました(著者は元広告マンらしいので、実体験かもしれません)。当然作中でも「サボってんじゃないのか」とチェックを入れられますが、そこはハードボイルド、逆に相手を凹まします。容姿に関する記述がないのでどんな風体なのかは想像するしかないのですが、多分カッコイイ風。ちなみに濡れ場はナシ。
纏う空気はハードボイルドなんだけど、軸はホワイダニット・・・になるのかな。人間が何かを行うには必ず理由がある、というテーマに沿って数々の謎が浮かび上がるといった感じ。読んでいて全く先が見えなくて、なにがしたいのかなぁと思いながら読んだのですが、いくつか想像できる着地点の中で最もイヤーな結末でした。でも〆はハードボイルドの王道ってな感じでやっぱり(笑)。