石田 衣良『反自殺クラブ』

池袋ウエストゲートパーク第5弾。風俗スカウトサークルの集団レイプ事件「スカウトマンズ・ブルース」 伝説のスターが夢見たロック博物館の候補地を巡る不動産詐欺事件「伝説の星」 日本の玩具メーカーの中国工場で過労死した姉の仇をとるために戦う中国人キャッチガール「死に至る玩具」 集団自殺をプロデュースする自殺サイトのクモ男と自殺遺児のチームとの戦い「反自殺クラブ」の4編収録。

ストリートの今を鮮やかに切り取るってのがこのシリーズの売りですが、今作は暗い。取り扱うネタが暗すぎる。集団レイプに過剰な労働による過労死に集団自殺ですよ。2003年から2004年の前半に発表された作品たちなので、ちょっとばっかりネタ的には古めですが、どれもその時代を反映するネタなことは確かなわけで、つまりこの暗さは時代を反映しているということで、なんかヤな世の中になっちゃったよなぁ・・・なんて思ってしまった。
一つ前の『電子の星』から「真島誠はいる?」って店にやってきた見知らぬ人のトラブルを解決するってパターンになってきていて、そこへ様々な特技を持つシリーズキャラクターを適材適所で使いつつ、その時々で話題の事件と結びつけるという手法が確立されたな、と思う。マコトやタカシが今現在何歳ぐらいなのかはっきりしないのですが(季節は描かれているので考えれば分かると思うけど)、例えば誰かが結婚して、子供ができたなんて展開にならない限り、このパターンでもうしばらくは書き続けられるな。それは、新鮮味は全くなくなってしまったということでもあるんだけど。
それにしても、みんなどこでマコトの噂を聞いてくるんだろう。タイトル作は特に池袋という土地とは関係ない話だし、このままだと、はるばる埼玉からやってきましたとかいうことにもなりかねない気がするんだけど。要するに、キングもっと出せー!ってことが言いたいだけです。タカシファン。「スカウトマンズ・ブルース」でのタカシの「めんどくさいから、やっちゃおか」ってのは萌えるが、そこはかとなくTV版のキングエキスが入ってる気がしましたよ。