大沢在昌『心では重すぎる』

心では重すぎる

心では重すぎる

佐久間公シリーズ4作目。かなり読み応えがある作品です。1300枚というだけあって、漫画界の裏側やSM講義など、むしろそこまで書く必要ないんじゃない?と思うほど細部までしっかり書き込んであります。要素も、失踪した人気漫画家、漫画家を探して欲しいと依頼する怪しげな金持ち、ヤク中にそれを犬と呼び奴隷扱いする謎の美少女、ヤクザに新興宗教マネーロンダリングといった感じでハードボイルド臭が漂いまくってます。舞台が渋谷なので、当然高校生なんかが絡むわけですが、佐久間公もおじさんになったんだなぁ・・・って感じです。もう別の人種というか異星人?ってぐらいにかみ合わない。鮫よりも佐久間シリーズにより一層作者の影が見えると思っているわけですが、作者の実感なのかなぁ、この辺は。日本のハードボイルド作品として、かなり高品質な作品だと思います。ただ、やっぱり大沢といえば新宿、六本木なんだよな。渋谷の街の描き方はダメだと思います。何故渋谷だけは特別なのか、という部分が全く見えない。きっと作者には理解できなかったのだろうけど、登場人物の誰かにもっと語らせてもよかったかな。