石持 浅海『Rのつく月には気をつけよう』『Rのつく月には気をつけよう 賢者のグラス』

「Rのつく月には気をつけよう」

Rのつく月には気をつけよう (祥伝社文庫)

Rのつく月には気をつけよう (祥伝社文庫)

大学時代からの呑み友達トリオは社会人になってからも定期的に飲み会を開いているが、飲み会のアクセントは毎回招くゲストの恋バナ。

ってなことで、『酒と恋に懲りた者はない。(飲み会での恋愛話はいつでも謎に満ち、飽きない、楽しいの意)』と帯にあるように気楽な感じかと思いきや、どうにもこうにも後味微妙。面白くないという意味での微妙ではなく、石持さんにかかると「恋バナ」でさえこんなに面倒臭いものになっちゃうんですね・・・という意味での微妙です。完全なるハッピーエンドのものでもザラっとした後味が残るのはなんなの。

と思いながら読み進めていたら、最後の最後で全く予想してなかった「恋バナ」に・・・。
パラパラと読み返してみたら容姿や話し言葉といった直接的な表現ではなく、結婚を控えた女性を個人的な飲み会に誘うか?とか、婚約者を男性二人との飲み会に連れて行くか?といった“常識”でもってそこに思い至ることはできたように思うけど、まったくもってそのセンは考えもしなかった、というか、BLぶっこんできた!と一瞬喜んでしまった私が哀れすぎる・・・・・・。


「Rのつく月には気をつけよう 賢者のグラス」

というわけで、長江と熊さんが結婚し、夏美の子供も小学四年になり、つまり前作から少なくとも10年とかそこいらの時間が経過しての続編です。
今作から熊井の表記は渚になり、「熊さん」が「渚」になったわけですが、苗字からなるあだ名だし熊井だから熊さんでぜんぜんおかしくはないんだけどさ、だけどやっぱり女性に「熊さん」はないよなー・・・とぶつぶつぶつ。

独身だった前作は酒の肴は「恋バナ」だったものが三人とも結婚した今作は「家族」になり、そのせいなのかそれとも三人が伴侶を得て親になったことでの精神面・人間性の変化なのかはわかりませんが(どっちもかな)前作と比べて「そういえば」から始まる「話」の内容はずいぶんとありきたりなものになりましたが、でもやっぱりすんなり「いい話だね」で終わらせないところが好き。

前作のことがあるんで今作も最後の1篇に「仕掛け」があるのだろうという心積もりで読んだので、今回は作中で明かされる前に(つまみを用意してる時点で)そういうことかと見抜けましたが、それはさておきこの二組の家族の関係性はとても羨ましいし、ちょっと妬ましい。