主人公である国際的に活躍している女性ジャーナリストが
チェチェンで命がけの取材を行っている場面から物語は始まり、帰国後、主人公は
佐渡で介護虐待の取材中突如自分の記憶が普通じゃないことに気付き、そして若年性
アルツハイマー症だと診断される。その頃
タジキスタンで原因不明の
感染症によって多くの死者が出ていて、主人公は
若い女性アシスタントとともに取材に向かったが、ロシアについた途端アシスタントは大量の吐血をし付き添った主人公とともに病院で隔離される。それは新型
感染症の症状そのものであったが、その時点では女性アシスタントが感染するはずもなく・・・という
パンデミックものですが、読み応えありました。ロシアと
アメリカが絡むスケールの大きな話でありながら焦点はしっかり女性主人公に向いているので話がとっちらかることもなく、過度に煽るような描写もないので内容に対して(反して)とても冷静なんですよね。
まぁ同病者に記憶の混乱を繰り返すことによって病気であることがわかった(おかしいと自覚した)と語らせているのに、主人公がそれを認識するまでの展開が早すぎるとか、症状の出方(出るときと出ないとき)が話しの都合すぎるとか、主人公が抱える病気の描写にちょっと引っ掛かりはしましたが、癖もなくとても読みやすかった。
初めて読む作家さんなんで他の作品も読みたいと思って巻末の作者紹介を確認したら、これが初の単行本だそうでちょっと驚いたんだけど、と同時にテレビ局勤務だそうで、道理で・・・といろいろ納得。